Neetel Inside ニートノベル
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探偵のロジック

 「質問がある。」
一通り俺の話を聞いてから探偵が尋ねた。
「君は結局その藻女とやらについてネットで調べたのかい?」
「いえ、結局あれからネットを見ることそのものが怖くなってしまって・・・全く確かめられてないんですよ。」
 俺が意気消沈したように答えると、
「なるほど、まずは事実確認から入らないとね。」
 探偵はそう言って、ベルベット生地のチェアに自分の居場所を移すと、書斎机の上に置かれたノートPCに電源をつけた。OSが完全に立ち上がるまでの時間に、
「その事件ね、かなり話題の事件だよ。怪奇な事件はボクの悪趣味な助手がデータでファイリングしているだろうからある程度詳しい情報も見られるはずだ。」
 そんなに有名な事件だったのか・・・。
悪趣味な助手とは五百蔵のことだろうか。
 探偵はしばらく何かしらの操作をしていたようだが、やがて立ち上がってこちらに顔を向けると、
「こいつだ!」
そう言って、俺に自分の隣に来るよう手で合図した。俺は恐る恐る近づいて探偵の横から画面を覗き込むと、ノートPCのディスプレイにはエクセルファイルが開かれており、事件に関する記事と情報が貼り付けてあった。その記事には次のような見出しが書いてあった。
「S県山奥で変死体見つかる!?」
 まさしくJが俺に見せた記事とほぼ同じ内容だった。
「だけどこれは君の友人が言っていた事件とは違う事件だ。今からちょうど1年ほど前の事件だよ。」
と探偵助手は言った。
「一年前?ということはこれがJが言っていた過去2度の事件の1度目ってこと?」
「そのようだね。ちなみに2度目の記事もあるよ!ほらこれ。これもS県だが別の山奥で死体が見つかったみたいだね。」
そう言って探偵は表示ページを別のタブに切り替えた。そこに書かれている内容もほぼ同じ。警察は1度目の事件と関連付けて捜査を進めていると書いてあった。2つに共通するのは殺し方と遺体の状態。両方の事件で遺体は丸裸にされ、その胸に包丁をつきたてられていたという。
「両方とも犯人はいまだ見つからずのようだね。容姿すら判明していない。それに・・・。」探偵はこちらに視線を移して続ける。
「確かに御友人は本当のことを言っているようだね。」
「え?」
俺は思わず聞き返してしまった。
「こうやって事実確認をするまでは完全にJ君の話はブラックボックスだったわけだよ。僕の記憶も完璧じゃないしね。J君が言う一連の事件も彼がついた嘘だということ可能性が考えられた。だがそうシンプルでもないみたいだね。」
 この探偵は何を言っているのだろう?それではまるでJが俺をだましているのだと最初から疑っていたみたいではないか。

       

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