Neetel Inside ニートノベル
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俺が怪訝な顔をしてうつむいていたためか、
「まあそう深く考えることでもないよ。探偵はあらゆることについてロジカルに思考しなければいけない。すべての事件はロジックなんだ。」
探偵は右の眉に右人差し指を交差して当てながら、これまで見せたことのないな優しい笑みを見せた。その眼には一体何が見えているのだろう・・・。そんなことを考えていると、
「じゃあ次は藻女について調べてみようか。」
そう言いながら、ブラウザの検索欄に藻女と打ち込んだ。
 藻女についてのリンクが多数表示される。その下に表示されているリンク先のページ内の簡易情報のみを高速で閲覧し、下にスクロールしていくのだが、俺は全くそのスピードについていけない。
何度か気になるリンク先を開いてページ内の文面を読み取っていたようだが、それも俺から見ると流し読みしているだけのようなスピードだ。
20分、いや30分ほど経過しただろうか、探偵はふと何か思い立ったように顔をあげ、お決まりの動作をして見せた。
しばらくそのまま目を瞑って何か考え事をしていたようだが、俺のほうに向き直ると藻女についての説明を始めた。
「御友人の言うように都市伝説の類のようだね。過去に君が見たようなスレが複数上がっていたのも事実のようだ。ただ、その数は2個や3個の話じゃないみたいだね。」
「そんなに多いんですか?」
「ああ、ざっと見たところ30くらいは立ってたみたいだ。それに藻女の人物像もはっきりしていない。テンプレートと化したかのような決めフレーズがスレッド中盤以降に決まって書き込まれるところは共通しているが、藻女の外見に関することは一切書かれていない。」
探偵は続ける。
「そのほかで分かったことは、この多数のスレッドの乱立は2度目の事件が起きる前後から今日までにかけて集中していることと、藻女の由来が喪女から来ているらしいことだな。」
「喪女?」
「あれ?君は知らないのかい?この掲示板サイトではもてない女性を揶揄して喪女と呼ぶらしいぞ。俗称だな。藻女はそれを元にイメージが加えられたのか単に誰かの打ち間違えから広がったのか・・・。」
探偵は添えていた右手を顔から外し、胸の前で腕を組んだ。
「それって違いがあるんですか?」
俺が問うと、
「大有りだね。イメージから加えられたのなら、それは藻女の文章から読み取れる性格、はたまた容姿を表しているのかもしれない。後者の場合はイメージ後続方だ。」
なるほど・・・。自分の思慮の浅さを恥じた。
「まあ、なんにせよ現状この事件と藻女の間に繋がりがあるかどうかも分からない団塊だ。とりあえず今日はこの辺にしよう。君も良く話してくれた。後はゆっくり家で休んでくれ。詳しくはこちらで調べておくよ。」
 そう言うと、探偵は立ち上がって大きく背伸びをした。俺と同じで元々が猫背のためか、伸び上がると普段の身長よりもかなり高く感じる。猫背の状態でも一般の男性より長身であるところが俺との違いではあるのだが。
顔の造形は俺と似ていなくもないかもしれない。基本的にのっぺりとしていて目は切れ長で細く唇は薄い。髪型にはとくに注意を払っていないのかセットしている様子は見られない。それでもストレートヘアなので不潔な印象がないのは羨ましい。俺は癖が強い髪質なのだ。鼻は決して高くないが小さく顔の中央に収まっている。
「あの、このあと俺はどうすれば?」
探偵がえらくあっさりと終わりを宣言してしまったため、俺は若干の不安を覚えていた。いや、それ以上にあれだけのことがあったにも関わらず一人で家に戻ることへの恐怖があり、その場で立ち尽くしてしまったのだ。
「本当に何もしなくていいよ。心配しなくても君は何もされないから大丈夫だ。」
 一体どういうことなのだろう。
「それにうちの助手にも君についていってもらわなければならないしね。助手には事件の”要因”は伝えず”結果”だけ知らせておくよ。彼女ならそれだけで十分な働きをしてくれるはずだ。」
「そうなんですか。それはじゃあいいとして、今後の進捗はどうやって?」
「ああ、あとは僕たちの部活のHP(ホームページ)を君のメールアドレスに送っておくからそいつを定期的にチェックしてくれ。」
「へ?」
思わず変な声で聞き返してしまった。

       

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