Neetel Inside ニートノベル
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「あーした天気になーれ」のかけ声と共にユニのサンダルが宙を舞う。何回か空中を回転し落下、地面を転がり、止まったとき、サンダルは正しい形になった
「わーい!明日は晴れだ!」と無邪気にはしゃぐユニを尻目にナルゲンは農場の周りを観察していた空は雲ひとつなく、
燕は高く飛んでいる。
「明日は晴れだよね?」その質問にナルゲンは億劫そうに頷いて答える。
その態度が気に食わなかったのかユニが食ってかかる
「ねぇ、晴れなの?雨なの?どっちなの?」
「晴れですよお嬢さん」ナルゲンはそっけなく答える。
「あたしのサンダルがそう示したから?」
「そんなわけないだろ、子供じゃないんだから」
「あーっ!また子供扱い、あたしと2つしか違わないのに!それに今年で二十歳になりました!」
「その言動が子供なんですけど……」
その後もユニは突拍子もないことを延々としゃべり続けた。それにたいして、ナルゲンは適当に相槌を打ち、意見を求められたならば適切に返していた。
しばらくしてもおしゃべり娘は口を止めない「そういえばナルゲンさんってあたしの話を聞いてなさそうでちゃんと聞いてくれるよね」
その言葉にナルゲンは突如むせる。
「いきなり何を言い出すんだよ」
「え?何で動揺してるの?」
「別に」
「他の女の子には積極的に話すのにあたしとふたりきりになったとたん冷たくなるし……」
「そんなことない!」これにはユニも驚くがすぐに「何むきになってるの?」と面白そうに茶化し始める。それにたいしてしどろもどろのナルゲン。

どれくらいの時間がたったのであろう、日は傾き始め、先ほどまで青々としていた草原がは朱に染まっていた。
整備された道を2人は 歩く
「農場の仕事、すぐ終わっちゃったね」
「まぁ、薬を撒くだけであいつらは逃げていったからな」
「ナルゲンさんはすごいね、天気もわかるし、害虫や害獣から作物を守る薬を作っちゃうし」
「昔は農業が仕事だったし、天気予報も、薬の開発もただの趣味だよ」「……何で今迄旅をしていたの?」返事は帰ってこなかった。

日は落ち、彼らを照らすのは多くの星と1つの満月となった。ビュンという音と共に二人の間に風が吹き込む。木々や草がかすれあい、虫たちは音楽をかなでる。
「ユニは、この自分が住んでいる町から出ていきたい、と思ったことはあるか?」
「ないけど何で?」
「俺も出ていきたくなかった。でも……」
「でも?」
「出ていかなければいけなくなった」
「……借金?それとも仕事で失敗したの?」ユニはあどける。
「ユニ!お前、人が深刻な話をしているのに!」
「……悲しそうな顔はナルゲンさんには似合わないよ」はっと我に帰るナルゲン、そして「すまん 」と一言呟いた。
「ほんとはこの町も長居をするつもりじゃなかったんでしょ」
「だれから聞いたんだ?」
「……ごめんなさい、ナルゲンさんとお父さんがはなしてるところを」
「盗み聞きしたんだな」再び沈黙が続く。

ユニの家が、見えてきたところでナルゲンが口を開く。「ユニ、俺って怖いか?」あまりにおかしな質問にユニは吹き出し「そんなわけないじゃない」と返した。

彼女がこの質問の本当の意味を、この質問をした意図を知るのはそう遠くはなかった

       

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