Neetel Inside ニートノベル
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「確かに首のない熊は、ナルゲンが討伐したであろう熊は焼かれていました。ただ…」
「ただ?」
「ちょっと火力が異常何です。ナルゲンは当時油を持っていなかったはずなのにそれを使ったかあるいは、それ以上の火力で熊を焼いているんです」
「気合いでどうこうできる問題ではなかったのだな?」
「……まあそうですね」
調査隊長からの報告を聞きながらポレスは考え込んでいた。(油がないのに油以上の火力を出す方法といったらあれしか……)そんなことを思っていると調査隊長が喋り出す。
「さらに不可解なことがあります」
「不可解なこと?」
「はい。まず熊の死体なのですが、剣により、切られたのではく、何か槍上のもので貫かれた後があります」
……ナルゲンは槍を持っていないはずである
「さらにナルゲンは、私たちが熊の調査に向かうと言ったところかなり動揺して、調査をやめるように訴えてきました」
調査隊長は続ける「最初は熊の討伐が行われていないか、或いは代行を疑ったのですが、そうではありませんでした」
「いくら金のためであろうと、そんなことをするようなやつではないからな。」
「とりあえず、今わかっていることはこれだけです引き続き調査を続けます」
そう言うと、調査隊長はポレスに深々と頭を下げ、調査隊の教練、回れ右をして部屋を出ていった。

「はい、何ですか町長殿」ナルゲンは不機嫌そうにポレスをみる。
「……町長命令だ、しばらくは事情聴取を受けてもらう」
「つまり……俺を逮捕するんですね?」
ナルゲンはポレスをにらむ。
「……お前がこのまちに来たときもそんな顔をしていたな」
「俺はやましいことは何一つしていません」
「なら、潔白を自分の口から証明してくれ」
ナルゲンの顔は怒りと悲しみが混じったなんとも言えない表情をしていた。暫く続く沈黙。ナルゲンは重い口を開いた
「なら、俺はこの町から出ていきます。元々ここには長くいるつもりはなかったですし」
「それでいいのか?」ポレスは続ける。
「わしに隠し事はしないでくれ、すべて話すんだ」
「それができないから!」怒号と共にナルゲンは机を叩く。ふたりに緊張が走る。ポレスは眉ひとつ動かさずナルゲンを見つめる。当のナルゲンはそれができないから……、と何度も、何度も、小さく、小さく繰り返した。

「ポレスさん先程は失礼しました。それと迷惑をかけてすみませんでした。この町での暮らしは楽しかったです。」
ナルゲンは革の鎧に身を包んでいた。背中には小さめの背のうを、そのなかには薬の材料とすこしばかりの食料と衣類が入っている。
「本当にこれでいいのか?」
ポレスは残念そうだった。4年振りに再会した昔の部下、とんでもない大馬鹿者ではあったが、息子のように接してきた。別れはつらい。
「まさかポレスさんに娘がいたとは思いませんでしたよ、しかもにてないし」娘と全然似てないことをからかわれ、ナルゲンを殴ったことを思い出す。

「……たっしゃでな」
「そっちも、お体に気を付けて、無理しないでくださいよ。町長さん」
行く宛のない若者はこの町の門を目指して歩みを進めた。2、3 歩歩いて思い出したかのように「ユニにもよろしく伝えてください」と誰にいったのかも、独り言かもわからないように呟いた。

ナルゲンはこの町の出口辺りまで近づいた。長居をするはずではなかった。住み慣れた町を、村を出るのはつらいものがある。初めて自分の故郷を捨てたときもこんな気持ちだった。もうあんな思いをしたくない。そのために放浪をしていたのに。門が見えてくる。相変わらず衛兵の仕事は暇そうだ。今日の衛兵は壁に寄りかかって眠っている。(ここを通れば……)そんなことを思っていると後ろから自分を呼ぶ声がする。
「待ってくれぇ!ナルゲンさん」顔馴染みの衛兵が自分を引き留める。どうしたのか聞こうとした瞬間だった。
「町が……町が盗賊に襲われている!」見ると普段は閉じられているはずの門が開いている。平和な筈のネマリの町に、ナルゲンに緊張が走る。

       

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