Neetel Inside ニートノベル
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鏡に写ったのは自分が陥れられる経緯と、それに加担したものたちの姿であった。特にショックを受けたのは、アレンが金で動いたことであった。恋心を弄ばれ、踏みにじられた。鏡に写った罪人共を、両親の敵を裁かなくては。
    怒りが頂点に達したところで、ヒルマが声をかけた。
「さっきの少女見たいに、お主も暴れて見ないか?」
    ヒルマはそういうと、太刀を取り出し、それをアニスに渡した。
初めて握る武器、恐怖か、罪悪感か、はたまた喜びなのかわからない。手が震える。
「これで、人を?」声が震えていることにびっくりする。
「ほう、ここに来て怖じ気付いたのか」
ヒルマはそういうと優しくアニスに語りかける。
「昔二人の偉人がいてな、彼らは人間の性について正反対の考えを持っていた。まず、『人間の本性は基本的に善である故に後天的に悪を知る』という性善説、『人間の本性は基本的に悪であるという故に後天的に道徳を知る』という性悪説だ」
   ヒルマは一呼吸おいて、アニスに質問する。
「アニスよ、そなたはどちらが正しいと思う?」
   アニスは迷った。両親は忙しいながら、自分を愛してくれていた。アレンも自分を裏切りはしたが、それでも自分に優しくしてくれた。一方、教会の人間は……
「アニスよ、難しく考えるのではない。……では、問おうお主のその悪意はどこからやって来たのだ?」
ヒルマはアニスを優しく抱き締めた。
「お主のことは少しだけ調べさせてもらったぞ。優しくて、賢いのに、怖い思いをしたな」
「ヒルマさん」
    ヒルマの胸の内で泣いてしまった。そして決意した。やはり、あの罪人どもに同じ苦しみを。上木鉢のお返しに、花束で。

「では、転送魔法をかけるぞ。 準備は良いか?」
    アニスはこくりとうなずく。覚悟は決めた。からだが軽くなる。「頑張るのだぞ」そんなことばが聞こえた気がした。

       

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