Neetel Inside ベータマガジン
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「人間以下」
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17577


山田一人先生作品。
他にも多くの連載をされてますが、残念ながら私は初見の作家さんです。
本作以外は2012年ごろの連載なので、最近復活した作家さんというところですね。
活発に更新されて、もう三話まで進んでいます。
早めに感想書かないと溜まりそうなので、優先して書く事にします。

■粗筋
24歳無職童貞の高崎。
金もないのに居酒屋で飲み食い、遅れて来るはずの友人の金をあてにする。
ところが友人が来れなくなり、無銭飲食となってしまいそうになる。
そこで飲むのをやめればいいのに毒を食らわば皿までと飲み続ける。
救いの手は、高校の先輩・曽根からの突然の電話。
紹介する仕事につくなら支払いをもってくれるという。
高崎はそれに乗り、曽根にとある豪邸へ連れていかれる。
豪邸の地下には、人間以下と見なされたクズを真っ裸にして檻に閉じ込める「人間動物園」があった。
高崎へ紹介された仕事とは、その人間動物園の管理人だった。

■東京闇虫的アンダーグラウンドワールド
文章はとても書き慣れていて上手い。
個人的にこういうテーマは大好きですし、ぐっと惹きつけられました。
主人公の高崎は、まさに新都社作品では模範的とも言える主人公(クズニート)です。
何か同情すべき事情があるという訳でもない。
今の状況も自業自得というエリートクズです。
居酒屋のくだりは、これから高崎に何があっても「同情しなくていいな」と感じさせるに十分。
漫画「闇金ウシジマくん」にも近いですが、どちらかといえば主人公が悪に染まっていく様子は「東京闇虫」を思い起こさせます。
自分とは無縁の世界、アンダーグラウンドのクズや底辺を見て嘲笑うという趣向なのか、サスペンスダークホラーとなっていくのか。
まだ物語は序盤ですからどうなっていくか分かりませんが…。
現在の流れだと高崎はますます悪に染まっていきそう。
でもその先、ただ堕ちていくだけなのか、別の道はあるのか?
そこに注目していきたいですね。

■娯楽としての人間以下観察
古代ローマから闘技場で奴隷を戦わせるという娯楽はあった。
動物を使ったサーカスと同じく、人間同士の殺し合いも娯楽だった。
それに比べると、本作における人間動物園はソフトに思える。
この人間以下のクズ達に殺し合いをさせるとかならまだしも。
単に見世物にするだけなのか?

>「私のような成功者になるほど、ここにいる動物たちの存在に自尊心を満たされるものなんだ。だから他の成功者にも有料でここを解放している。

葛城はこう言うが、ウシジマくんに出てくるような底辺を見て喜ぶのは、どちらかと言えば中流層ではないでしょうか?
底辺・下層くんを見て、「自分はこいつらよりマシだ」となる。
成功者・上流階級は、そこまで底辺を見て喜ぶだろうか?
それこそ古代ローマのような殺し合いレベルの過激さならともかく。
ですから、これからこの「人間動物園」がどのようなエンターテイメントを見せてくれるのか?
葛城は曽根以上にヤバイ雰囲気を持っていそうですしね、絶対こんな程度じゃないはず。
えぐい展開期待しています。(ゲス顔)



以下、各話感想です。

■第一話「24歳、無職、童貞」
居酒屋でのくだり、実に清々しいクズっぷり。
童貞である事も強調されているが、ついでなのか伏線なのかどうかが気になる。
高崎は24歳で童貞だが風俗に行くのもプライドが許さないという。
自分が底辺だと自覚しているし、一見そんなに自己評価は高くない人間のように思える。
風俗に行かないのも、金が無いから行けないだけなのか?
少しでも金があれば行っているのではないのか?
純愛とか清い交際とかに憧れているロマンチックな男には見えない。
風俗なんて1~2万もあれば行けるのだから、バイトで食いつないでいるにせよ行けない事はないだろう。
2~3日分の日当が消えるだけだ。
「ウシジマくん」に出てくる金が無い債務者でも行っている。
むしろ自己評価が低い人ほど、風俗に行くのに躊躇が無い。
風俗という底辺の世界を覗くには、気位が高い人は目線が高すぎるのだ。
だから、プライドが高いというのは本当なのだろう。
プライドが高い=見下されてもしょうがない現状には不満を抱えているはず。
自己評価は本当はもっと高く、チャンスがあれば自分の能力を誇示したいと考えている。
他者を見下しているから、簡単に残酷になれる。
約束をドタキャンした松野に対し、「来ないと殺す」と悪態をつくあたりからしてそう。
実に嗜虐的な性向が透けて見える。

■第二話「Welcome To The Underground」
高校時代の高崎の回想。
不良の曽根とつるんでいた話。
当時は曽根ほどの悪には染まりきっていなかったものの、簡単に状況に流されている。
縄跳びでの鞭打ちをやったのかやっていないのか?
曽根との付き合いがすぐに復活したあたりからして、やったんだろう。
現在に戻り、豪邸に連れてこられる。
神戸市灘区篠原本町4-3-1あたりの光景に近いですねw
曽根よりヤバそうな葛城という悪のカリスマが出てくる。
何を考えているのか分からない不気味な雰囲気が良く出ています。
穏やかそうに笑うけど目は笑っていない。
有無を言わせない迫力。

■第三話「ZOO」
曽根同様、葛城にも感化され、すっかり悪に染まり切っていく。
動物園の猿ぐつわの男に首を絞められ、ババアに絞められた時に比べれば…と出てくる。
母親に殺されかけた事があるのか。
気位は高くても金を掴まされた途端、罪悪感も弄ばれているという不快感も消えうせる。
やはりクズであるw

三話まで読みましたが、非常に読ませる内容だし、文章力も読みやすい。
大変レベルの高い作品です。
読んで損はない、文句なしにおすすめです。

       

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