4月18日更新ニノベ作品感想


★4月18日更新ニノベ作品の感想2★

これからが文芸・ニノベ作品感2想本番の始まりです。
感想スタートは更新量の多いニノベから。
今回は11作品更新がありました。内4作品は新作。
まずまずといった滑り出し。ありがたい!
ですが3作品はすでに更新されているので感想は書かない& ageない方向です。
8作品分の感想を書いたら今回更新作品の全体総括を〆で記載しますのでそちらも確認してもらえるとよいかと思います。


今回は以下の作品感想を書く予定でいることを報告しておきます。
よろしくお願いします。(更新順に列挙)

「欠けた天使の与能力(ゴッドブレス)」
「ドラゴンズペニス」
「ソナタ」
「フライハイ」
「愛と笑いの夜」
「オピオイドの繭」
「事実は小説より…小説なり」
「陽子と春子のものがたり」





「ドラゴンズペニス」   和田 駄々  作
 http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17529

10周年企画の感想もこちらの作品で始まり、本番感想もやはりこの作品から始まりました。特に意味はないのですが、更新速度がとても速い作家さんなので可能な限り早めに感想を更新しようと思ったまでです。
意識したわけではないのですが、作品更新である偶数日と感想日程がかぶりました。嬉しいです。しかしそれにしても、前回感想を書いたのは第一話の6まで。以来既に16話分も更新されていました。筆の速さには圧巻。また、いい感じの挿絵もついて豪華になっていました。
文芸・ニノベ界隈における習慣的コメント不足、こちらの悩みも本作に限ってはなさそうですね。



■前回までのあらすじ

敵国ボンザの囚人となったレザナルドの国軍隊長グラーグ。彼は拷問を受けるなか古竜と契約を交わす。その契約とは人間の女と交わり竜の子を産ませること。契約成立、竜の陰茎はグラーグの股間をとらえる。グラーグと竜(マブズラウフア)は手始めに拷問役を務める女傭兵を犯す。次に捕まっていた国の王女を犯しまんまと逃げおおせる。その後グラーグは自分の兵団「竜根傭兵団」結成へ向け動き始める。



■各話ごとの感想(3~4更新分でまとめています)

第一話 竜と人
7~9
着実にメンバーを増やしていく竜根傭兵団。グラーグは昼夜を問わず多忙を極める。心身と精力の回復は必須条件。そんなおり得た回復薬「魔女の霊薬」はすこぶる効果をあげる良薬だった。それを作った魔女を竜根傭兵団に加えるべくグラーグは夜の闇へ繰り出すのですが……。

女ばかりの大奥所帯になっていく傭兵団、だが女同士の火種は見られず。むしろそれが物語の中で今は雑味になりそうなので、ここでは出てこなかったので良い点だと思いました。
相変わらず笑わせるグラーグと古竜ちんこの会話。竜は賢い。それ故でしょうか、マズブラウフアが聖剣を小バカにする姿勢に笑います。

フラウリーチェの奥ゆかし恋慕、それを肯定するカルベネの包容力に気持ちがほぐれ好感をもった。
メリダンの執念と気迫には、彼女自身は自覚がないかもしれないけど、既に芽生えている胎児との強い繋がりを感じさせられました。そんなふうに書かれてないけど、はからずも引きよせられる性みたいなものかな…。
意表を突く新人物登場にも興味をそそられつつ、ラストシーンでは結果どうあれグラーグが彼らしいリアクションをとってくれたことに「うん」と唸りました。
第一話目全体を通しで見ると、先行型の短編として十二分に読めそう。それくらいしっかりまとまっている内容だったと思います。漫画雑誌の長編連載の前にありますよね、連載前に雑誌で短編を先行掲載させるという事例。

第二話 日々と戦い
1~3
カルベネの竜根傭兵団入隊により武を補う知が加わる。浮かび上がるグラーグが最初に潰すべき強敵スヴェイル。彼はかつて孤児院で見知る人物だった。


目的意識をもって入団するカルベネの強い意思に好感がもてる。たとえ腕力がなくとも彼女は入団という形で自らの知略を活かし団の力を得たわけだから二つの武器を得たと言える。ぜひ目的を達成してほしいと思った。自己紹介、そこはやはり略さないのね。長いわwww
スヴェイルはマザコン! 型にぴたりとはまるグラーグへの劣等感。そこからくる彼の活動はおそらく今後十分発揮されるだろうと感じました。ぜひ心ズタズタになって格好悪く足掻いてほしい人物であり、負を担う人物としてとても大事な存在だと思った。
程よく苛め程よく尊重。そんな関係が心地良い人間関係かもしれない。グラーグにとってソリアンがそうなんでしょうか。友達少なそうですもんねグラーグは。昔のスヴェイル相手の小競り合いではソリアンの重要さを色濃く感じさせられます。これが後に第二話の重要な伏線となるとは読んでいるとき全く意識しませんでした。感服。

おそらくタイプミス> 妊娠さえる→妊娠させる

4~7
スヴェイル率いる宵闇傭兵団との衝突に備えメリダンから情報を聞き出すグラーグ。盗賊団の解体依頼任務をあっさり完遂した竜根傭兵団。グラーグはそのとき訪れた農村で小娘を拾う。


レザナルド、ボンザ、コルチア。三国の政治的かけ引き、戦争が絡んできて第一話より内容も濃くなっています。面白味が増してきた! まさに本格的ファンタジー。笑わせるばかりじゃありません。
カルベネは入団間もないのによく働きます。彼女は本当に良い参謀。
ここでのメリダンもなかなか可愛いかった。苛めがいのありそうな彼女の表情が目に浮かぶようです。また彼女の妄想世界への引き込みも秀逸でした。まさか作家が大風呂敷広げるのか!? と思ったほどです。
ちょっとした拾いものラッキーアイテム感のあるテルフィ。彼女の存在は竜根傭兵団でどんな役割になるのかこれからが興味深いです。

8~11
グラーグに拾われたテルフィ。団での幸せ待遇に彼女は戸惑いを覚える。片やレザナルド国内ではスヴェイルが国王を退け実権を握り台頭する。竜根傭兵団いよいよ宵闇傭兵団との戦闘にむけマシアへと発つ。


母に止められつつもグラーグを打つ気のスヴェイル。自分の器量が見えない浅慮な人間にうつります。早死にしないといいんですが…あまりやる気満々すぎると死の影を近くに感じてしまいます。
マシアへ向けて拠点から発つ団員へ向けてグラーグは激を飛ばす。その姿は雄々しい! 猛々しい! 下半身丸出しで女性に向けて朝礼コクとか、もしそんな校長が現実にいたらかっこよすぎますね。皆俺についてコイ! まあ、二秒後に撲殺されて通報でしょうけどw
いつもはお笑いキャラなマズブラウフアが母体の胎児と話しているところがとても微笑ましく温かい。日ごろ見せない竜の違った一面を見た。温もりを感じる部分でした。

更新分
1~4
ついに始まるマシアでの宵闇傭兵団との対決。スヴェイルは勝ち戦であえて得意の策で攻める。しかしそれを逆手にとって備えるカルベネの戦略。戦場は一転、竜根傭兵団の旗色は良くなった。グラーグは教会跡でスヴェイルと対決。そこにあった罠とは――。

 
傭兵だから強いのは当たり前なんです。ですがそんなこと理解しつつも、ここでのメリダンのハッスルがとてもかっこよかったと思います。スヴェイルは上手く逃げおおせますが、シーンとして書かれていないメリダンの猛る姿が行間の余白から伝わりました。
グラーグが考はスヴェイルに一策あった。もちろんスヴェイルにも一策あった。更に互いにもっていた隠しだね。最後の最後まで勝負は五分五分だった。しかし結果価値を決めたのはグラーグ。グラーグが死なないのは当たり前として、復活までの見せ方がとても巧でした。


■今回更新分の総括
展開も早くテンポも抜群でした。駄々先生の凄いと思うところは、目新しさを感じるネタを惜しみなくポンポン盛り込んできてくれるところ。これでもかというくらい面白いエサをもらっている気分です。
一見斬新でありながら物語の筋書きや世界観に非常にマッチしていている設定が沢山あります。故に浮いた感じがまるでしません。フィクションの中でのリアリティをちゃんと感じられる作品です。
良く考えなくてもこの作品は男一人(一匹分ちんこ)に女多数のハーレムですよね。ですがハーレム作品にありがちなあの黄色いキャピッとした空気がない。これはとても個人的にうれしい。重要ですこれ。大人のための本格ファンタジーとても心地よい。ハーレムでファンタジーでありながら硬派を守ってくれているところに好感が持てます。そしてなおかつ笑える。エンターテイメント性もある。なかなかひょいひょい書けるものではありませんね。作家の凄さに感動します。
登場人物個々の人物描写も秀逸だったと思います。一人一人がしっかり物語の中で顔をもち、いい動きをし、キャラクターとしての責務をこなしていた。
何度も言いますが、本当に凄い本当に凄い。凄い!
本作既にコメント100を超えていますが、1000コメント行くのもち問い未来ではなさそうです。
ああ、面白かったです!!


■作中特に印象深かった箇所
・ここ数日、フラウリーチェは毎晩自分で自分を慰めている。
カルベネはこの事実に気づいている。そして知りながら尚をその行為を肯定し抱擁できる。彼女の懐の広さを称える。人として自然なことへの深い理解がる人物と好感を持つ。
フラウには微笑ましさ。
・「思ってもいない事は言えん」
愚直だな。しかし良い。本心が聞けたのだから。人生最後に聞いた言葉が真実。それはある意味ちゃんと相手を見ていたことにもなると思わされた。
・「戦って死にたい」
メリダンの言葉。渋いです。
・自分が目の前の男よりどんな場合でも優秀であるという事を、証明したかったのだ。
人間らしい醜い感情。だけど必要。雑味の無い人物ばかりではつまらない。好きにはならないタイプの人物だけどこういう人は必要な人材と思う。
・「悪いな、グラーグ」以下4行
普通に想定できそうなビックリだったけど、まんまと一杯食わされた。してやられた感があった。



以上この作品に関する18日更新分までの感想はここまで。





「陽子と春子の物語」   aco 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17740


初見の作家さんです。別名かもしれない。しかし確信はないので初投稿として認識。
新作の一作目としての投稿。感想日程にあわせられたのは偶然か否か。頑張ってほしいところです。
書きたい気持ちがひたすら先行しておられるのか、所どころ推敲に欠ける部分が見受けられました。
書き慣れていないということでしょうか?



■高三女子が語る双子の妹たちの夢物語。
ほんわかとした趣のある作風でした。雰囲気は悪くない。良い。持ち味だと思いましたので誇っていい。
仲良しの双子姉妹がいてそれを楽しく見守る姉の私。和気あいあいとした空気が伝わってきて心温まります。
朝、家族が揃う場に起きてこない双子の片割れ春子。それを起こしに行くもう一方の双子の片割れ陽子。二人が一緒に見る夢の話になってこれといった落ちもなく終わる。落ちだったかもしれないが分かり辛かった。
ジャンルに「夢落ち」とあり期待しましたが見事に肩透かしを食らいました。残念。
厳しいことを言いますと、一話分での更新なら何か夢落ちになるような、ひいてはそれが読者の掴みになる描写が欲しいところです。作家さんの中だけで物語が出来上がっていても読者には伝わってこないと思います。
ジャンルに夢落ちとあるだけに、この一話目の更新であっと思わせる何かを仕込むとか、語術トリックみたいなものがないと読者の気持ちを掴むのは難しいと思いました。
長文は書き慣れておられない感じなので今後数をこなして執筆に慣れて欲しいと思いました。
まず手始めには奇をてらって頑張りすぎず、テクニックとかも考えず、丁寧な普通の文章、物語の組み立てを意識してみて欲しいと思いました。


以下特に気になった点を具体的にあげておきます。


作品冒頭、第五段落までの人称が分かり辛かった。誰の視点なのか、誰の台詞なのか、登場人物がどういう人間なのか。読者が得たい情報をまず分かり易く(ほかの上手な作品を参考にしながら)書いてください。


「一つの夢を二人でアクセスするという感じだ。」
この部分、日本語としては間違いではない。文も正しい。ですが表現としては前の文脈から違和感を覚えました。おそらくここで書くなら「一つの夢に二人で(が)アクセスするという感じだ。」ではないかと思います。
感覚的な部分なので気にならない読み手もあるかと思います。語感の問題でしょうか? 個人的には気になりました。


しかしギャジラはだけど今日(夢)、
普通に難読です。読み詰まる。



あと、処女作で一話目難しいと思いますが、「まとめて読む」ではなく何かタイトル欲しいところです。



以上この作品に関する18日更新分の感想はここまで。







「フライハイ」   てるまふ 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17676

こちらも初見の作家さんです。作品の雰囲気からすると初めての投稿でしょうか。
作品ジャンルは空戦青春。同じく戦争・軍事関連作品ですと新都社文芸作家ではヤーゲンヴォルフ先生がその雄として誇る存在と認識しております。リスペクトでしょうかディスパイズでしょうか。どっちゃでもええかw
文芸・ニノベ作品では戦争・軍事作品に関心をもつ読者も多々見られますので本作にもその期待が寄せられているようです。



■死の淵で意識が昏睡する主人公・誠。再び目を開けたときそこにいたのは銀髪で紅色の目をした少女。


冒頭三行、主人公の理想や意志のようなもので読み手の気持ちを掴んでくれるのに好印象。
視点は昏睡状態の誠の見る世界。彼がどんなふうに臨死体験をしているのかねちねちと書かれています。これも悪くないでしょう。作家さんの書きたいものがこういう意識の部分なんだというのが伝わります。
沢山のものを一度に見せるのではなく描くシーンをある程度限定されていて世界観には入り易いです。


昏睡状態から少し意識が回復してきているのでしょうか。ちょっと難しい表現をされようとしているふうに見えましたがその辺どうだろう。意識回復と昏睡の間を行き来するような感じととれば良いのでしょうか。なんやようわからんなあ~で終わってしまいそうな気配が少しありました。しかしこれもいいでしょう。痛覚が芽生えているという事は目覚めが近いと解釈できましたので。
覚醒後の会話文でパッと光が作品内に光が入ったような感じがします。登場したのが女子キャラだったからでしょうね。そうでなかったらラノベの域に入り難かったかもしれませんね。男かー!ってなえたかもw


■今回更新分の総括
1~2を通じて見えてくるのは死の淵から目覚めるまでの誠の不安定な意識。瀕死状態の彼の意識世界やふわふわした夢のような世界、目覚める前に感じ始める肉体感覚。拙くはありますが伝わってくるものがありました。
ただ惜しむらくは文章力。これが拙い。未熟です。非常に惜しい。言い回しの奇妙さ、言葉の誤用がちらほら感じられる箇所がありました。書き慣れていないんだろうなと思います。まだまだ書くという下地をこれから積んでいく感じがしました。頑張ってほしいです。
主人公の誠、人称が「ぼく」というからには傭兵としてはまだ少年兵。ぺーぺー身分と見受けます。作中表現からもまさかチート設定はないだろうと。チートならそれはそれで面白いけど。冒頭3行と少女をみてびっくりしてるあたりそれはないもよう。
主人公の成長ぶりを見せてくれるのでしょうか、短くまとめた短編になるか…そこはわかりませんが楽しみにしたいと思います。


■以下気になった表現

重複表現が二か所。

「重圧が圧し掛かる。」→「重圧がかかる。」あるいは「重圧が伸しかかる。」
重圧は重い圧がある状態。圧としてすでにかかっている状態なので後続に「圧し掛かる」は要らないかと思いました。

「怒涛の勢いで襲ってくる」→「怒涛のように(ごとく)襲ってくる」
怒涛はすでに勢いがある様子なので後続に「勢い」がくると違和感を覚える。



誤用と誤字。

血で塗りたくしたような → 血で塗りたくったような
ち漬ける → ち着ける


構文、文節の妙。
「その様はスポットライトに当てられた舞台の様で、ぼくは車のハンドルにも似た操縦桿をぎゅっと握り締める。」

文章はおかしくない。文意も通じる。言いたいことはよく分かる。しかし違和感を覚えました。
前文「その光は闇に染められた海面の一部分だけを照らし出していた。」を受ける後続文とするなら読点「、」で一文に繋げず句点「。」で切って二文に分ける方が読み心地がよいと感じました。
人それぞれでしょうけど、個人的な感想です。


以上この作品に関する18日更新分の感想はここまで。


「事実は小説より…小説なり」   のば 作
http://neetsha.jp/inside/main.php?magazine=9

初見の作家さんです。
作品ジャンルはファンタジー。
ファンタジーでは10周年企画でいくつかの作品感想を書かせてもらいました。
感想企画ホストの後藤健二先生もファンタジー作家として有名ですね。
和田駄々先生の「ドラゴンズペニス」は今もっとも勢いのある人気作品です。
大御所はさておき新作とのことで楽しく読ませていただきました。



■各話ごとの感想

アンインストール…→ボーダーライン

神様はポンコツである。神様はボケてしまった。
世界を創造した神様がただのボケ爺さんでいいのでしょうか。文体もこれまた軽い軽い。クスッと笑いました。しかし冒頭神様の紹介で一話目のタイトルに関する気配は微塵も感じられない。神様と話しているこの人物は一体誰なんだとも思いました。


女子生徒の荒上に屋上へ呼び出されるも、すっぽかして帰る蓮川という人物。彼が本作の主人公でしょうか。神様と話していた人物と同じ人なのか? 謎です。
街中でドラゴンを見るかと思うとTSUTAYAがある。スカイツリーがある。世界観がよく掴めない。めちゃくちゃだということは理解できる。TSUTAYAで蓮川が幼馴染の紅林という女子と喋っていると、突如爆発が起こる。唐突過ぎます。
そこへ謎のロングブーツ男登場。男は何やら魔法みたいなものを披露して去っていく。円は回転しても球にはなりませんよ。だいたいこんな感じの毎日って、こんな毎日シュールすぎます。何だこれは。タイトルの気配は相変わらずどこにあるんだか分からないw


世界は何度も滅んでやり直しているのは結局人類が悪い。神様はそんな人類の相手に疲れてボケた。
人間らしい神様というのには好感が持てる。漫画的ですね。面白いと思います。一か所知らない言葉が出てきました。「Sレア」ってなんですか。調べましたけど、あえて知らないと記しておきます。
学校の授業で理科と魔法があるようですが、科学と魔法の理屈での解釈。これ設定上どうするのだろうと思いました。荒を感じます。うまく設定を作って嘘をついてほしいところ。

■神様日記
どちらかというと日誌ではないでしょうか。
神様の惰性を感じました。

■インストール・イン・ストーリー
5年くらい前とありますが、本作の時系列がそもそもわからない。場面ごとにしか情景も伝わってきません。
あまりそういうのは意識されていないようですね。
地の文や会話文からも人物像が分かりにくい。神様の世界と蓮川の世界、どちらに重きを置いているのかも分かりにくいと感じました。



■本作更新分の総括
小説、物語として読むにはあまりにも散漫です。場面がひたすらコロコロ変わる。会話がやや突飛である。よく分からない事態が突然起こる。全体を読んでみてどこに物語の軸があるのか分からない。情景や人物、世界観の描写も不十分でザルです。しかしだからといってつまらないということはないんです。隙があり過ぎる一人称の地の文には笑えるところがいくつかありました。言葉のノリは構えることがありませんので平易に読めます。しかしそれは良くいえば読み易い。悪くいえば物足りなくて陳腐と映ることがあるでしょう。作家さんはあまり掘り下げて情報を伝える気がないのかもしれない、とも考えましたがその辺は疑問。だから重厚な作風のファンタジーを求める方にはおすすめできません。これを作風とされているなら特に問題ないですが、読み手としては個人的に無味乾燥な気がしました。魅力的とは少し言い難いと思います。面白い文体で書かれているだけに惜しいと感じました。



以上この作品に関する18日更新分の感想はここまで。



「愛と笑いの夜」   ヤマダ=チャン 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17738

読切り作品です。
感想日程にあわせて新作を投稿してくださりました。
ありがとうございます。とてもうれしいです。
新しい作家さんの中では企画への参加や新作投稿と、とても勢いがあって頼もしいかぎり。
お祭り騒ぎはもうおしまい。これからは直球勝負で感想行きますよ~。
ご覚悟! (ほどほどに…)



『忘れてしまおう』

■各話ごとの感想

どこにでもいる普通のOL松川幸子。のんべんだらりのくうねる生活。いい歳こいてまだ独身。そんな彼女の様子がつれづれに描かれる。
「まあいいか」気の緩み、妥協を常習とする幸子。彼女の隙は肩がこらず、むしろ自然体で安心感を覚えます。良いところです。
二十代後半にも近づけば、ごく普通の女性の生活。熱心な趣味でもあればそちらにのめりこむでしょう。男女限らず、興味のあることに、自然と気持ちのベクトルが向く。結婚が漠然としか見えないうちはそんな気もします。自分に置きかえるとやはりそう。グルメ、お洒落、音楽、旅行、コレクション、オタク系他色々あるかと思います。しかし幸子にそれはない。あってもおかしくなさそうです。オヤジでも好きなものくらいある。彼女の人間らしい嗜好はどんなだろうかと思いました。
何かないのか――。
行動パターンは、私が作画を担当している「私とお酒の日々」のヒロインとよく似ています。共通するところがります。肩書はOLでそれ以外は何の変哲もない。しかし彼女はお酒が好き。とても好き。酒に入れ込んでいる女性。そこから引き出せる魅力が大いにあるので、幸子も何かに入れ込む一面があるといいかと思いました。細やかなものでも何でもいい。つまらんこだわりでもいい。何かあれば。

誤字
・まどうことなく→まごうことなく(粉うことなき)
この言葉、調べてみましたが用法や表記法が少し難しいみたいです。詳しくは各自調べてください。


ずぼらに毎日が過ぎ、季節は巡る。自ずと歳もとっている。そんなおり、コンビニで昔の同級生・山崎総一郎に出会う。
こうれはもう兆しととりました。しかしこれまでの幸子の描写から、にわかにチャンスと思えない。総くんには彼女がいるとか、結婚しているとか、期待を逸らされても仕方ないだろうと思いました。だって幸子の話だからしょうがないよね、みたいに妙に納得してしまいそう。そうそう現実うまくいくことないよと。
実際のところ、作中では総くんの彼女の有無、そこは微妙なぼかしを残しつつ上手く引きが施されていていました。
彼女がいたらあんなおんぼろ自転車は、さすがになかったわけです。あとで気づきましたw


高校卒業当時の回想。当時の総くんの気持ちと現在の自分の気持ちを重ねる幸子。その心は揺れる。
特別ではないけど割と仲が良かった二人。幸子の気持ちはなんとなく理解できる。総くんを受け入れていたら、違った未来があったかもしれない。けれど曖昧な返事をしなかった彼女へ、個人的に好感をもてました。自分に置きかえれば、そのほうが愁いはなかったろうと思います。幸子自身はモヤモヤがあったようですね。しかしそういう気持ちを経験するのも青春らしくていいと思います。
二人の再開がお互いに、飾らない年齢になってからで良かった。一人の大人として、長短両方受け入れあえるような関係が築けそうです。明るい未来を感じます。



■作品の総括
初のヤマダ先生の読切り作品。冗長短編作品企画へも作品をすでに更新済み。早いですね。今回こちらの作品を読ませて頂いて、いっそう企画の作品に期待が高まります。女性の内面や行動の描写は相変わらずです。よく心得ておられる。今回も幸子の心理描写から、しぐさに至るまで丁寧に書かれていました。「まあいいや」で済ませてしまう幸子の緩さ、ぐうたら具合は誰だって持っている一面。共感を覚えます。各話ごとの導入も文量はやや多め。しかし無駄があるようには感じませんでした。読ませる魅力のある文章だと思います。引きの部分においてもまた余韻が心地よかった。ただ、全体をとおして緻密な書き込みに疲れを感じる読み手もあるかもしれません。個人的には許容範囲でした。作風から、この緻密さを読んだ後に、用意されていた読後の解放感、物語の広がりを考えると上々の出来だと思いました。これから先の可能性を考えさせられる味わいある一作だったと思います。感服です。
まとまりの美しい読切り作品としておすすめしたいです。



■作中特に印象に残った箇所

・無駄に多い小銭を使ってぴったり払う、ちょっといい気分。
昔、飲食バイトをしていた頃、ランチメニューのお金を10円と5円と1円で払っていくお客様がいました。昼時にこれをされて泣きたかったのを記憶しています。
・「今日は特別綺麗に見えるね」
やらしいぞ!


以上この作品に関する18日更新分の感想はここまで。


「ソナタ」   三浦 作
http://lapluie.kumogakure.com/novel.html

10周年企画では第46話まで読ませてもらっていました。
感想企画を通じて、一話から一気に読むことになった三浦先生の作品。
話数を増すごとに、文章の変化を感じられるのが、面白いところです。
私も作画でそうなんですが、初期と現在、作画安定しませんねw



■今までのあらすじ
日常編では双子の兄・透と妹・光が、自分の学校や他校の不良を巻き込んで、面白おかしく、ドタバタバトルを繰り広げる様が描かれていました。透は草食男子でへなちょこ。光は勝気で男勝りに喧嘩が強い。透は自分に降りかかる厄介ごとを、いつも光に処理してもらうのでした。しかし日常編終盤にくると、そんな彼も修行と称し、己を鍛える道を選びます。
透輝大学病院編では、病院内の極秘施設に入り込んだ透と光、その他の仲間が謎の実験に利用されそうになる。しかしその実験には、透や光の体質に通じる要素があった。作品のカラーはバトルコメディから、バトルである本質を掘り下げていく、サイエンス的方向に移行してきます。



■各話ごとの感想

第四十七話 道重珊瑚その②
謎の研究施設の目的に反して、「カーニバル」を人工的に作り出す喜びに燃える孔雀嘉男。そんな彼に不安を覚える珊瑚。
つっこみを入れたい場所で、しっかりボケてくれて安心しました。孔雀のカーニバル遺伝子の発注先には爆笑。何でも売っているんですね、あの通販サイト。私も愛用しています。返品もききますし、商品レビューもあるので買い物しやすいです。またレビューも投稿できますからね。
ずっと気になっていたんですが、この施設には監視カメラがないのでしょうか?

第四十八話 孔雀嘉男
優秀な兄を持っていた嘉男。彼は幼少の頃から、兄への劣等感と相手にされない両親の愛に飢えていた。
孔雀に対しては、何を考えているかは別として、不屈の人物であると映りました。彼の生い立ちや渇望を思うと、子供ながら人道からそれず、よく人生やってこられたと思いました。

孔雀と珊瑚の、ゲイの例を挙げる場面。
ここではもう少しメリハリのある、極端なたとえ話が欲しいと思いました。
孔雀は現状、とても普通の人の価値観ではないように書かれていました。つまり、孔雀+ゲイであった場合…。ゲイにも危機が及ぶ気配を若干感じます。男女の例でもそう。男子が危険かもしれません。
「普通に生きていても向こうからやってくる恐怖」をもっと極端に、どちらか一方が確実に、命にかかわる危機を感じられる例えが欲しい。その上で孔雀が理解していない状態なら、もっとすっきりこの場面が生きたように思いました。珊瑚の一生懸命さも、読み手に伝わったと思います。

第四十九話 桔流赤丹
パーツが好きな桔流赤丹。霙の能力へ、実験成功前から大興奮で彼女を称える。一方、病棟内では相変わらず入院を強いられている真赭が、漫画好きの黒人・パンさんと仲良しに。
赤丹の一人喋り。長い。ウザイw
魂を肉体にうつす作業で、成功かどうかもわからないのに賞賛を送る赤丹。ウザイw
サイエンス色が少し濃くなってきていますが、ソナタ独自の世界観は変わらず。読んでいてくたびれないので、程よい取り入れ方だと感じました。あまりサイエンスに走りすぎると、この作品では浮いてしまうような気もします。今ぐらいのほうが個人的には好みです。
腕がもげたクローン?  クスってなりました。

第五十話 若芽繁その①
研究員仲間の死は重大な問題。珊瑚、孔雀、若芽は事後処理をどうするかについて悩みます。そこへ……。
え? 赤丹さん?
最初本気でまさかと思いましたw ラストまで読んでですよね~って安心。

誤字
天上→天井 (二行連続で変換ミスあり)



■今回までの更新分の総括
三浦先生の作品への強い意気込みには、毎度驚かされる気迫があります。これだけの長編をよく構成して書かれているのと、物語の世界に引きずり込む意志がひしひしと伝わってきます。また、読み手が斜に構えて読まなくても良い文章で、安心感もそそられます。そこがニノベで、無二の個性として映るのでしょう。誇るべきです。心地よいです。今回までの更新分で、人物像も割とくっきりつかめてきました。透輝大学病院編の研究者と用心棒の面々、彼らの個性もしっかり書かれていますので、随分話も追いやすくなったと感じました。孔雀嘉男にまつわるねっとりとした過去話では、闇のある人間性描写に、好感が持てました。若芽がまだ薄いけど、それは今後にという事でしょうね。ギャグ要素の入れ方もいつもの小技で笑わせてくれました。
良い作品ですので、もっと読まれて欲しいなと思います。応援!



■作中印象に残った箇所

・孔雀がカーニバル遺伝子を発注したこと。それに対する若芽との会話。
とてもウケた。
・働きに大きいも小さいもない。
木村さん気になる。登場が楽しみである。自分の仕事でも言われてみたいですが、そうすると皆サボりだす国民性。色々辛いです。
・漫画好きのパンさん
新しい登場人物。キャラクター性と立ち位置が絶妙。



以上この作品に関する18日更新分の感想はここまで。


「欠けた天使の与能力」   滝杉こげお 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=17573

今回も感想日程にあわせて下さったのでしょうか。嬉しいです。
前回の感想から随分話数も進んでいるので、感想の書きがいもあるというもの。
物語にどんな動きがあったのか……。
本腰を入れて感想書きますので、ちょっとしおっ辛いことも言いますが、これに屈せず頑張ってほしいところ。



■各話ごとの感想

第二話 何かの足音   
着々と進む生誕祭の準備。アーエルは弟天使オーエルの、意味ありげな言葉に一抹の不安を覚える。神の敬称式の行方は……。
どうしても、何としても神になりたいアーエル。その気持ちがくどいほどうかがえました。アーエルのそんな気持ちを、強く書きたかったのだろうという、作者の気持ちがつたわります。
神の社で登場する巨大な天使ふたり。この構図にはとても神々しい、独特の世界観を感じました。天使として登場するアーエル、ウーエル、オーエル、そして神、学園の同じ天使やウシエルからは、はっきり言って凡庸な人間らしさしか感じません。ですがこの社にいる巨大天使たち、メタトロンとサンダルフォンに関しては、人間とは明らかに違う異種性や、カリスマ性を感じました。天界にそぐう天使だと思います。巨大天使がいなければこのシーンとてもつまらなかった。


気になった表現(誤用)

・筋トレがてら走って俺が探してきてやろうか?

「がてら」の使い方が奇妙だと思います。そらく「走りがてら探す」なら良い。
「がてら」は三つの動作を同時に行うときに、使える言葉ではないはずです。ウーエルは筋トレと走ることと、オーエルを探すことを同時に行うことになるので、動作に矛盾がでます。意図的な表現でしょうか? だとしたら分かり憎いです。筋トレも定位置で行おう運動なので、「探してきてやろうか?」の「来る」の意味とかみ合いません。


ややくどい・書き過ぎ
食卓の席に着く。→食卓に着く。
文脈から食卓と席はペアの存在。ない状態は普通ありえないので、あえて書かなくても伝わります。


誤字
アーエン→アーエル(二か所あった)
伸長→身長(変換ミス)
予知夢のそのうちの一つ。→予知夢もそのうちの一つ。(格助詞タイプミス)


第三話  崩れた天使の向かう先
神の御前で頭を垂れるアーエルと弟たち。ついに神の継承は行われた。しかし結果はアーエルの思いとは異なった。
読んでいて期待を裏切られた感じはしませんでした。お約束的な意外性もちゃんと組み込まれていて、物語を読んでいて面白く感じます。神の決定で取り残されるアーエル。想像はしていたけどとても楽しめた瞬間です。
アーエルの心が崩壊していく様から、一生懸命な表現が滲んできます。


気になった表現
・夢かみも、弟かみもすべて。
この「かみ」は「神」のことでしょうか? 
特別平仮名である意図が、ちょっと分かりにくい表現です。


第四話  最後の日常
継承式以来、心は壊れてしまったアーエル。懸命に最後の平常心を繋ぎとめようとするが難しい。その結末、アーエルのとった行動は?
アーエルの吹っ切れた感じが怖いですね。思わずにやけてしまいました。
や、アーエルが普通に面白い。

登場人物紹介
人物紹介なのであまり書き過ぎると興ざめします。ここで詳しく説明するより、本文でどういう人物なのか読み手に分からせる方が得策かと思います。
簡潔に、特徴さえ書いておけばよいかと。(参考:ニノベ企画「生け贄の旅」くらいでよい)



■今回更新分までの総括
作品数を重ねるごとに、執筆での成長が確実に感じられる作家さんです。こげお先生の作品は今まで、どれも読ませてもらっています。完結できないと思ったときは気にせず、どんどん新作へ着手すればいいかと思います。物語を完結させることは初志貫徹、確実に力になると思います。コメント欄でもふれられていましたが、本作が今までの中で、一番良い出来だと私も思います。文章力において不十分なところはありますが、あまり気にすることではありません。物語はしっかり構成されていますし、独自の世界観もあるように感じました。物語(小説)としてちゃんと成立している作品だと思います。
自分に浸りすぎている主人公アーエル。彼の心情も、面白いくらい人物像がぶれずに、よく書ききられていると思います。作品の評価は「良」としていいでしょう。前述の不十分な文章力の面ではまだ発展途上。今後作品を書きつつ、学んでいけばいいと思います。
考察は主人公アーエルの今後になります。彼の崩壊、欠落をどのように書いていくかになるでしょうけど、既に構想があるなら楽しみにしたいところ。大きな現象を何かをおこして、物語を収束させていくか、静かに謎的ニュアンスを残しつつ終わるか、何にせよ期待しています。
この作品、完結すれば確実にこげお先生の力になるでしょう。ぜひ頑張ってほしい。



■作中特に印象深かった箇所

・晴れやかな気分が景色いつも以上に鮮やかに見せているのだろう。
人物の内面と周りの情景を、うまく重ねている。こういう書き方だと、読み手もすんなりアーエルの気持ちに入りやすい。同時に、周りの景色も自然に想像することができる。



〇おまけ
こげお先生の作品を読むとき、いつも思うのですが、行が短いのはなぜですか? 当初、この作品の作風で意図的に行を短く書いているのかと思いましたが、そうでもなさそう?



以上この作品に関する18日更新分の感想はここまで。


「オピオイドの繭」   黒兎玖乃 作
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=16904

速筆量産型作家の黒兎先生の作品です。この作品は追って読んでいました。
今回感想を書くにあたり、もう一度はじめから再読しました。
不思議な世界観に引き込んでくれるような、素敵な挿絵もついています。
感想仕様でじっくり読んだら疲れたw
今回の感想は難産。



■各話ごとの感想

序章 「旅に出よう」
舞台は現代。世界中で「繭化」という現象が起きて十年経っていた。自分たちの未来を案じた、主人公の少年・武藤学(愛称ムノー)はヒロイン・明穂と旅に出る。
蜘蛛の巣を貼ったような、膜に覆われる世界の情景が独特です。序章において世界観の構築がしっかりなされている様子がうかがえました。想定内の黒兎先生の表現力。文章に手があるなら、怪しげにおいでおいでと招いている気がします。
繭化という謎めいた現象の具体的な書き方も、趣があって良い。

ただ、若干いろいろ言葉を、意識しすぎている(拘り過ぎている)かな……、という気はします。蟲籠の時はあの文字や言葉の表現は、とても良かったと思います。作風にマッチしていた。ですが、こちらの作品はもう少し平易な文字単語を、増やしてもいいかと感じました。世界観には影響ないと思います。字体に頼らずとも、物語(本質)で見せて行く力量は、十分お持ちかと思います。文末にしばしば見られる表現。各話で時々あります。具体例は以下。

遣る→やる 

「気からくる病という学者」
学者は起こった(起こる)事実と現象に目を向けるはず。気やストレスといった、なんやよくわからん抽象的なものを病といわないと思います。だからこの表現は少し違和感。
これが民間療法専門家やヨガ、漢方の薬剤師が「気からくる病」というのであれば説得力はある。

一章  「ナッシングス・ゴナ・チェンジ」
旅に出たムノーと明穂が発見した奇妙な小屋。そこには男が独り暮らしていた。ムノーはそこで、葬儀屋としの仕事を施す。
繭化がどういう現象なのか。ムノーが葬儀屋として、どんなことをするのか。割と具体的に、彼の行動から知ることができます。しかしこの物語の中で、ムノーは葬儀屋として、固有の特殊能力を行使する表現はありません。作者は意図的にそうしているのでしょう。話術的な方向で完結させていく仕事ぶりが綺麗です。
妻を亡くした男は、涙も枯れた抜け殻の精神状態。それがまさしく繭化の発端。物語で焦点を当てる場所でもある。そこを順序良く読ませてくれました。
明穂の人物像も具体的になってきていました。ムノーとのかけあいが面白い。
言い残す言葉は見当たらない、といいながら3行分は喋る男。「ない」だけでいいだろ、とつっこむw


気になった表現。
所どころ、地の文で見せる箇所で息継ぎが苦しい文があります。読み辛いのではなく。黒兎先生の作風でよくみられる個性。上手な文章なので文自体は綺麗です。問題ない。しかしもうちょっと区切っても、読み手には優しいかもしれません。文芸作品でしたら、今くらいの区切りなんて問題にすらないでしょうけど。(作品全体で感じた)
句読点の区切り。考え出すと深くて難しいですね。

「塩湖めいた白に満ちた」
周辺の文章の滑らかさから、この部分だけ浮いてしまっています。「~た~た」の「た」が少し煩く感じました。てくてく歩いてきて、突然スキップを二回入れてまたてくてく歩く。そんな感じです。僅かに感じた程度。気にならない方もいるかと。

「予防法」
んんん!??と引っかかった。この言葉。
繭化の原因を序章でムノーは分かっていた。だから序章以降、原因から対処法や予防法を見つけるために、そういう意味合いで「見聞を広めるため」旅に出たと思い期待して読んでいた。しかしここで、ムノーが繭化の予防法も知っているという事実が分かる。みごと肩透かし。あれ? なんで?
ムノーの見聞を広めたい対象が、終わり行く世界(ただの舞台設定)の一周って(まるで隠居し爺さん婆さん)で少し残念。
どうせ抗うなら、苦心惨憺してやっと繭化の予防法を、ここへ来るまでに知り得ていた。みたいな情報があると「見聞を広めたい」という序章での描写が生き生きしたかもしれない。序章で繭化や膜についてねちねち書かれていただけに、期待からくる残念は否めない。

「終わる世界」
原因と予防法を知るムノーがいる限り、少なくともムノーの死が確認されない間は、終わるという実感がまるでない。明確に「終わる」とするよりは「いつか終わる」「近い将来終わる」程度のぼかしでいいだろうけど、その辺どうだろう。好みか。

二章 「キング・オブ・ニューイングランド」
小屋を出て三日後。ムノーと明穂は豪雨で足止めを喰らっていた。そんなとき、ムノーはコソ泥少年を捕まえる。
繭化せず生きているために必要なこと。いわゆる予防法にあたる内容がここでは描かれます。見せ方がとても斬新でした。巧妙ともいえる。コソ泥少年の妹はある執着を失ったがために、繭化が発症してしまいます。
発症した繭化はほんの些細な場所。ですが生きる人間が存在するうえで大切な要素。拘るべきところです。
上手く書かれていました。さすがです。憎い。
ふと気づいたのですが、葬儀屋ってムノーの他に誰かいないのでしょうか?

三章「スティル・ビー・シンキング・オン」
ギターの音と唄が聞こえる、崩れた集落へやって来たムノーと明穂。しかしそこの廃墟にはウタ(ムノー命名)意外人っ子一人ない。
またしても繭化予防の定理を覆されるムノー。細かな設定がしっかりされているためか、物語にひねりを加えられてもなかなか面白い。
廃墟に秘められている謎の答えも、読んでいると「ああきっとこう」だなと思わせられます。そういうさじ加減もなかなかなものでしいた。具体的に名言せず匂わせ、読み手に答えを握らせる。モチーフが故のトリックをはらむ書き方に、好感が持てました。廃墟を去る、最後の引きの部分も心地よかった。憎い。
ふと気づいたのですが、食糧って繭化しないのでしょうか?

四章  「グッドマンズ・アフターダーク」
落とし穴にはまって閉じ込められてしまうムノーと明穂。脱出かなうもそこでムノーは銃弾に胸を射抜かれる。
どうしてムノーと明穂は拘束されていたのでしょう? なにか読み逃しているのかな。不安だ。
ムノーの身体に起こっている傷跡・怪奇な現象。想像するとうっとくるものがありました。こういう猟奇的な表現も、文章が上手だと困りますね。怖い。

ここでものすごく気になった箇所があったので、ちょっとあげておきます。

【以下本文抜粋】
「なんだ、けっこう簡単に壊れるものなのね」
「ドアを蹴破るなら取っ手の辺りってね。でも僕を土台にする必要はあった?」
 若い少年少女の声だ。男は葉巻の火を潰す。
 かすかに聞こえる会話から察する所、少年の方はどうやら切れ者のようだ。
 男は態とらしく咳払いする。それを聞いた二人が会話を辞めたのを確認すると、明瞭な声で話し始める。
「その部屋から出てくるとは大したものだ。ちょっとこっちまで来てくれないか」
 しゃがれた声で言う。これも、何度も繰り返した問いかけだ。
 応じる可能性は低い。自分たちを閉じ込めた張本人のもとに勇んで進むなど、常人なら考えられないだろう。何人か素直にやってくる者もいたが、大体は過激な思想を持った人間だった。だからこの時も、男は大した期待を込めていなかった。それにつけても少年少女だ。危険なものに近づく真似はしないだろう。
 そう高をくくっていた男の前に。
「随分と雑な歓迎を、どうもありがとうございます」
 部屋から抜けだした二人は、アッサリと姿を見せた。男は思わず目を丸くする。
【本文抜粋ここまで】
上の本文中、男の台詞「その部屋から出てくるとは大したものだ。」をムノーの台詞「随分と雑な歓迎を、どうもありがとうございます」または「 部屋から抜けだした二人は、アッサリと姿を見せた。男は思わず目を丸くする。」の後ろに入れてみてください。おそらくその方が読み手には優しい。
なぜそう思うのか。
男が咳払いをしてムノーと明穂に話し始めたとき、三人はまた互いに対面していません。男はドアの外。ムノーと明穂は取ってが壊れたドアの内側。だから、対面する前にこの台詞が入ると、シーンに混乱が生じます。その混乱をより助長しているのが「ちょっとこっちまで来てくれないか」です。
前述に「出てくるとは大したものだ」という出る行為は既に終わっているかともとれる表現があるのに、「こっちまで来てくれないか」とさらに「来る」という行為をかぶせています。情景をあたまで浮かべたとき、男がものすごく遠くの人間に呼びかけているのか?と誤解する。
けれど、実際男はムノーの声が聞こえているので、さほど遠い距離が互いの間にあるとは思えない。
問いかけとするなら、「ちょっとこっちまで来てくれないか」だけの方が心地よいです。男が大した期待を込めなかったなら尚のこと言葉少なめでも問題ない。
俄かに「その部屋から出てくるとは大したものだ。」この台詞が、問いかけている、あるいは呼びかけている台詞に解釈し辛かったです。
感覚的な部分もあると思いますが、明確な方がこの場合は良いかと。あるいは違う書き方をするか。シーンがちょっと込み入っているだけに難しかったです。取っ手(ノブ)が壊れてドアが開いているのか、取っ手しか壊れておらずドアが開いていないのか。
「微かに聞こえる会話」では想像しきれない。ムノーの「蹴破るなら」は例え話かもしれない。明穂はただ壊しただけかも知らない。だからドアは壊れたけど開いてはいないと判断しました。

誤字
植えてる→飢えてる

五章  「コクーン・オブ・オピオイド」
主人公・武藤学の幼いころの出来事。
アメリカ禁止令。発動~。
理由。畑のとこ。ローカルファーマー(主にオーガニックになる)は普通に小さな農場だったりします。日本と同じくらい。アメリカでは農業をビジネスにするには、敷地面積に対する作物の種子を特定の会社からしか買ってはいけない。それに付随する農薬も特定の会社から買い、必ず散布しないといけないという決まりが法で定められています。日本よりは敷地面積に対する農薬散布量は実際少ないらしいのですが、作物は遺伝子組み換えとか、おおよそ先進し過ぎた農業様式です。これを良い悪いとするかは別ですが、広大な向こうの景色も見えないような土地はまず、先進的にがっつりオートメーション化された農業方式で運営されています。
私は別にオーがニストではありませんが、この作品ではそういう先進的な農業を匂わせるアメリカの畑という表現に残念な気持ちが生まれます。
せっかく新鮮なトマトなら、「アメリカ」の四文字は消して欲しい。この言葉なくしても伝えられる。文章力もったいないです。新鮮なトマトをよりおいしそうに書いてあると嬉しい。

水切り10回以上できる時点でムノーは神童です。



■今回更新分までの総括
以前一気読みをしていて、しばらく更新が止まっていた感じの作品です。随分前だったので、今回改めて読んでみると、色々詳しく掘り下げる部分もあって面白かったです。忘れかけていた物語を、再読で思い出す楽しみもありました。
黒兎先生の書かれる独特な世界観は、やはり健在です。緻密に書かれる繭化の世界は、想像しやすく白一色の視界が、滅びるものの儚さを映して綺麗にも見る。また、ムノーと明穂のかけあいで出てくる「デクノボー」。この表現も、受け答えがシリーズ化されていて微笑ましい。
経験豊富な文章力はまさに巧妙、腕利きと言えます。初心者には到底及びません。前述している言葉での拘りも、個性とすれば許容できる範囲ですので、あまり無くし過ぎても惜しいところ。加減は難しいと思います。少し特殊と思える「遣る」や「言つ」とかの使い方は、ある程度上手く文章が書けないと駆使できないので、難なく使える黒兎先生は、やはり凄いと感服しました。新都社で小説を上手く書こうと思うなら、最低3~5年くらいは、コンスタントに執筆修行をしないと、力が付いたと実感するのは無理でしょうねえ。そういう印象をこちらの作家さん他、文芸の古参の文芸作家さんを見ていると感じます。
ちょっとそれましたが、今後のこの作品への考察ですが、武藤学(ムノー)の幼少期の話が入ってきました。物語の本文でも、彼の自身のことについて入り込んできています。そこから次は、明穂のことへも、もっと具体的に触れられる章がくるのでしょうか。旅のはじまり、彼女の耳にあった膜が今でも気がかりです。明穂の病についても明かされてくるはず。二人旅ですから終幕はどちらか欠ける、両方残る、両方消える。この三つだと思いますが、いずれの終わりになっても、黒兎先生なら面白く書ききってくれると期待しています。完結目指して頑張ってください!!
ファンタジーな要素、異能モノ的な部分を匂わせるけど、それらとは確実に違うカテゴリーでくくれる作品です。世界終末記とはよく言ったもの。
不思議な幻想の世界が現実とも思える。そんな作品を読みたい方にはおすすめする一作です。



■作中印象に残深かった箇所

・薄幸野垂れ死に時代
明穂が戦災孤児みたいで普通にかわいそう。切ない表現。
・「クノー」「『クソ野郎かつ無能な武藤』」
シリーズ化良い!
・ぐほぉ
音良い。
・空は曇天、雨は猛烈。
音とリズム良い。
・武藤の口が、きりきりと開いた。
わずかな言葉だけど想像させるには十二分にある。
・どう足掻いても人並み以下にしか生きられないことは分かっているのに
「人並み」というのを調べてみました。「普通の人・一般的な人」とありました。抽象的で全く分かりません。
そこでこう考えました。
人は人である時点で皆人並みと。外的環境下における千差万別はあるでしょうけど、人であれば人並み。
人並み以下とはつまり人を含むそれより下のことになる。では動物か? これも違う。動物にするには動物が人の下に来る定理が何であるか決めないといけません。
では人を含むそれより下ってなんだ? …………分からん。しっくりくる答え募集。



以上この作品に関する18日更新分の感想はここまで。


4月18日更新分のニノベ作品全体を総括します。

今回ジャンルが上手くばらけていました。どれを読んでも基本的に楽しかったです。
作品自体の完成度や技術的な面には、個々に差があるんでしょうけど、どれも個性的で面白かったです。
感想を書くにあたり、作品を読んでいて気になったこともありました。
また、昨今の文芸・ニノベ作品へのコメント欄からうかがえるちょとした事象なども受けて……。
それは、執筆をなさる方の辞書(ないしその類)の使用頻度です。皆さんどれくらい使いますか?
感想企画を担当して以来、人様の作品の感想を、私も書くようになりました。すると少なからず、一定量の文章を書くようなります。当然妙な言葉づかいにも、少しは…、少しはですよ、気を配ります。
おのずと辞書や辞書機能を使うわけですよ。私は小説の執筆歴は新都社で三回(読切り、企画は除く)しかありません。作品を書いた経験自体は浅い方です。ですがやはり、長文を書くときは辞書を使いました。使ってあのレベルかと苛めてよいw
言葉づかいの妙や誤用はないか調べながら書きます。際立って難しい文章を書いたりはしませんが、やはり辞書は使います。Google検索すれば、たくさん辞書機能は簡単に出てきますので。
今回読ませてもらっていて、惜しいと感じたのには、作品自体が悪くないのに、言葉使いに違和感を覚えたことでした。気が付いたもの全てを取り上げてはいません。些末なことかもしれませんので。
しかし、これから執筆の経験を積んでいく作家さんは特に、気を配って損はないと思います。経験豊富な作家さんほど言葉への関心、貪欲さはやはりうかがえます。
私なんか偉そうにいえたものではありません。ですが作品を読んだときに、正しく使われていない言葉があると、やっぱり残念なときがあります。誤用を表現の域と思わせるには、よほどの文章力がいるかと思います。
日常生活(リアル)で他人に、作品を見せていないのであれば尚のこと。そこは自分で、気を配らないといけないんですね。いいつつ頭痛い自分!
日常使う言葉でも、間違って使っていることは沢山あるそうのです。
せめて執筆中は、なるべく頻繁に辞書を引いてもいいでしょう。自分の文章をとことん自分で疑ってみても、損はしないだろうということです。

自分も、意識しないとなー……ホジホジ
例>見聞を深める(誤)→見聞を広める(正)
上の例は、3月13日ニノベ作品感想その2でのやっちゃいけない表現でした(自戒)




他、参考までに――。

以前10周年企画で、概ね作品はプリントして、紙面で読むと伝えていました。
メモを書きこむので、それは現在も変わりません。
今回伝えておきたいのは、紙面でのレイアウト。
作品をプリントして読む場合、私は全作縦書き・縦読みです。
縦横を意識なさる作家さんもおられるようですね。
作風にどれほど影響があるのか、面白さは縦でも横でも変わらずと正直思う。どうだろう。検証はしていないから分からないけど……。極端な話、横書きAの良作が、縦書きBの駄作より劣るとは思えない。
好みでしょうかね。縦読みのほうが書籍を読んでいる気になりますので。
今のところ作品の横書き・横読みは考えていません。
あ、でもこの感想は横書き・横読みだ。


以上長いですが今回の総括でした。







次回感想は文芸です。 日程は以下。よろしくご記憶のほどお願いします!

5月 7日 更新〆きり刻限は 00:00時(深夜12時)まで。



sage