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「アーエル様、おかえりなさいませ」
 そう言ってウシエルはボクをエントランスで出迎える。

「ただいまウシエルさん」
 ボクは肩にかけた荷物をウシエルへと渡す。ウシエルはボク達家族の身
の回りの世話をしてもらっている天使、だいぶ老齢で父が子供のころから
この家で働いてもらっているそうだ。きちんと折り目の付いた黒のスーツ
が彼の仕事着。ボクの小さいころから変わらないその立ち姿は安らぎすら
も覚える。


「そういえばウーエル達は?」
「すでにいらっしゃいますよ」
 ボクが問うとウシエルは背後を掌で示す。見ると確かに2人の影が。


「おお、兄貴!! 遅かったじゃねえか」
「アーエル兄さん、おかえりなさい」
「ああ、ただいま。ウーエル、オーエル」
 ボクを出迎え家の奥から出てきたのは弟二人。次男のウーエル、三男の
オーエル。オーエルはボクへと駆け寄ると満面の笑み。ウーエルはウシエ
ルの横で頭の後ろに手を組み口角を挙げる。
 落ち着きがなく兄であるボクにも平気で喰ってかかってくるウーエル、
自分に自信がなく、けれどもその分気の優しいオーエル。性格の違うボク
達三人兄弟であったが、仲は良い。特に末っ子のオーエルはボクやウーエ
ルによくなついている。

「ふふふ、アーエル兄さん。とうとう明日だね」
「なんだ、オーエル。お前も気になっていたのか。明日の『継承式』のこ
と」
「うん、もちろんだよ。だってアーエル兄さんかウーエル兄さん、どちら
かの晴れ舞台になるんだよ。気にならないわけがないじゃないか」
「はははははっ、オーエル。お前も候補者の一人なんだぞ。確かにボクや
ウーエルと比べたらまだ若いお前だけれどお前には才能がある。ボク達に
遠慮するなよ」
 ボクが頭をなでてやるとオーエルは照れたように笑顔を見せる。

「まったくだぜ、オーエルよお。おめえに足りねえのは自信だ。俺らなん
かに義理立てする必要はねえよ。お前も候補者だ、他を押しのけてでも神
の座狙いに行かなきゃな」
「うへえ、ウーエル兄ぃ。僕には無理だよう」
「やってやれないことはねえだろ。なんてったってお前はこのウーエルの
弟なんだからよ」
「ウーエル、お前はお前でもう少し自重しろ」
 オーエルとの会話に割り言ってきたウーエル。ボクはウーエルにくぎを
刺す。自信ばかりのウーエル、能力はあるが自信の無いオーエル。二人の
その姿を見てボクは微笑む。やはり神にふさわしいのはこのボクだ、と。

「ははは。とにかく兄貴!! 明日は誰が神に選ばれたとしても恨みっこな
しだぜ」
 どこからその自信は来るのだろう。ウーエルは自分の部屋へと戻るため
歩き出したボクの背中にそういうのだった。