屋根を見ていた。
白蛇はいないようだ。
あれはいつだったか。
何度も巡った過去だった。

屋根裏に駆け込むと、外からぎごぎごと削る音が聞こえた。
梁はなくなっていた。鬼は嘆いた。
それからはずっと薄暗闇の中だった。
鬼は屋根の隙間から、繰り返す四季をずっと眺めていた。
そして気付いたら白蛇が住んでいた。
これが鬼の全てだった。

ばっさばっさと音がする。
烏天狗が社殿の屋根に止まった。
「鬼が社殿の中から出られぬとは情けないよのう。白から知らせがきた。ここいらはよく飛んでおる。たまには寄って、旅の話でも聞かせてやろう。」

鬼は顔を出し、こくりと頷いた。

「聞いた通りの無口や奴じゃ。」

烏天狗は屋根に腰かけた。抜けた羽が舞った。