Neetel Inside 文芸新都
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黒兎物語
79 再会と決別・・・そして償い

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ガザミに見下ろされ改めて実感した。

「・・・そうか 俺こそがクソだったのか。」

ディオゴはうなだれる。こうなったのも全ては
己が招いた罪の証なのだと。
仲間に見放され、部下に見放され、ようやく気付いたのかと。
「・・・ 俺はどうしようもねぇクソだ・・・生きてる価値なんざァ更々無ぇ・・・だけどよォ、そんな俺でもまだ死ぬわけにゃァいかねェんだ・・・モニークを死に追いやり、故郷を滅ぼした元凶をこの手で始末するまでは・・・!!」
ディオゴは頭頂部の短い兎耳を引き干切らんばかりの勢いで鷲掴みにし、懇願するかのようにか細い声で言う。
「・・・頼む・・・・償いなら幾らでもする・・・・・どうか復讐を・・・遂げさせてくれ・・・」
もはやディオゴの精神は廃人寸前まで追い込まれていた。常人なら自殺か、発作かでとっくに死んでいてもおかしくはない。そんな彼の精神を支えているのは 最早モニークの仇を取る・・・ただそれだけのためだった。流石のこの姿に彼を見限っていた者達も同情を隠し切れなかった。

「……我が友、ディオゴ・J・コルレオーネよ。」ゲオルクは重い口を開く。誰もが見下げ果てたやつ、麻薬に溺れた凶暴な男と恐れていてもなお、ゲオルクはディオゴを友と呼ぶ。
「君の妹を殺し、黒兎人族の里を滅ぼした白兎人族の離反。その黒幕を暴くために・・・」
ゲオルクの声ではない 先程までこの場に居なかった男の声がした。ディオゴにとってその男の声は聞き覚えがあった。耳を引き干切らん勢いで下を俯いていたディオゴは目をかっと見開きゲオルクを見つめた。その顔には射殺す勢いで、眉間に皺が寄せられ、血走った目が吊り上がる。その怨嗟に満ちた禍々しい視線は、ゲオルクの背後に吸い寄せられていた。
「敢えて言おう。クソを食え・・・それが君の償いだと言うのなら・・・」
告げたのはゲオルクではなかった。
ディオゴだけでなく、多くの者達がその者の声のする方向を見つめた。
「まさか・・・嘘だろ?」
アナサスが漏らした一言も吸い寄せられる程の驚きが立ち込める。ゲオルクの背後に、毛艶の良い貴公子然とした白い兎面がそこにはあった。

・・・白兎人族王子セキーネ・ピーターシルヴァニアン・・・立っていたのは彼その人であった。

       

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