2-1~ニート的行動範囲~
以前にも述べた通り、
ニートは外出を疎んじる傾向にある。
丸一日自室から出ないなんて日もあるかもしれない。
そんな余りにも動きに乏しいニートを、
小説や漫画の主人公にしようと思うと大変だ。
場面に動きがなく、
単調でつまらない物になりがちだからである。
あ、このスレオモスレー……
今日も今日とていつものように、
起きたら早速パソコンを起動していた。
昨日もVIP、今日もVIP、
きっと明日も明後日も、そしてまた次の日も?
それは、ある意味とても魅力的にも思えるが……
一般的な成人ならば、
1年もの間ニートを続けることはないのだろう。
世間の目や生活費なども確かに辛い。
しかし、おそらく最も辛いのは有り余る時間である。
やることがない。
打ち込める趣味や追い求める夢、
職探しや家の手伝いなどすることがある奴はまだいい。
だが残念ながら、
私にはそんなものはなかった。
やることがない。
これこそが真のニートに立ちはだかる、
至上命題であると言っていい。
と、そんなことを考えてるようでは、
まだまだアマチュアニートである。
生き物はすべからく進化を遂げる。
キリンが頭上の葉を食べるために首を伸ばしたかの如く、
魚類が陸に上がるため肺を手に入れたかの如く、
先人達は既にこの至上命題に対する回答を得ていた。
即ち、暇を潰すために妄想という名の行為を獲得したのだ。
そうして彼らは全てを手にした。
部屋にいながらにしてサンサンと照りつける太陽の下へ、
剣と魔法が飛び交うファンタジーの世界へ、
更には自分の理想とする女性の下へ。
よって真のニートは暇を持て余すことはない。
ハァハァ……ユリアタソ……
私はいつものように妄想の世界へ飛び立ち、
そのまま意識を失った。