Neetel Inside ニートノベル
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 アルフヘイム側が甲皇国の動きをつかめずにいたのは、アーミーキャンプ内での権力闘争に明け暮れていたからだった。
 幼い容貌にアンバランスな白髪頭のエルフが玉座にだらしなく座っている。
「クラウスに部族会議の議席を与えよと推薦したとき、お主は何と言った。クラウス・サンティは皇帝になろうとしているのではないか。アルフヘイムに皇帝はいらない、そう言ったお主が女帝を名乗るとは何事か」
 目の上のたんこぶのダート・スタンの追及に、玉座に座るミハイル4世はいまいましげに答えた。
「初代皇帝でなくちゃ意味がない。おさがりの皇帝に価値があるか」
「なんと。そんな理由か」
「食えないジジイだ。あんたに荒廃したアルフヘイム本国を押し付けるつもりが、議長を辞職して私を追ってくるとはね。これじゃあ、何のためにラギルー一族を始末したのかわかりゃしない。政敵のために骨を折ったようなもんだ」
 ダート・スタンは年甲斐もなくつかみかかった。しかし、その手はミハイル4世に届かない。全身を黒い鎧で包み隠し、右手に大楯、大剣を片手で軽々と持つ重武装の騎士が音もなく近づきダート・スタンの首筋に剣を当てている。
「こやつ、過激派組織エルカイダの黒騎士。ババア、まさか貴様」
「余の真意に気づいたか。だが少し遅かったようだな。ミシュガルドに駐留するアルフヘイム軍はすでに押さえている」
 黒騎士はダート・スタンを拘束し、片ひざを折って拝礼した。
「神の千年樹帝国の扉があなたの前に開かれていますように」

 

       

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