コラウドとフェアを上空から狙う機体にも、甲皇国の軍幹部が乗っていた。エルフ特有の色素の薄い髪を後ろに流し、束ねて三つ編みにし、まばらなあごひげを生やしている。祖国アルフヘイムを裏切り、甲皇国の幹部となったヤーヒム・モツェピの姿がコクピットの中にあった。
ロンド式爆撃照準器をのぞき込み、標準をつける。
「左右修正、右に3クリック。上下修正、下へ2クリック」
自動でカウントダウンが開始される。
「5」
カウントが0になれば翼の下に装備されている
「4」
ヤーヒムは何かに気付き、照準画面を最大望遠にする。
「3」
そこに写っていたのは、クラウスに変装したコラウドの姿だった。
「2」
「クラウス将軍!?」
「1」
火箭が発射される寸前でヤーヒムは標準を解除した。
「0」
発射された
ヤーヒムはクラウスの顔を何度も確認し、すでに自分が術中にはまっているのではないかと疑心暗鬼に陥った。二式竜戦車は機体を旋回させ、ゲルの布陣する平野南西部を目指して飛んで行った。
英雄クラウス・サンティが生きていたのだとしたら。甲皇国の戦略は根本から覆ってしまう。戦車戦には勝利したものの、ゲルに報告して善後策を練るべきだ。