Neetel Inside ニートノベル
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 円形の城塞と内部の入り組んだ都市。原住民の遺構を再利用して建てられたため、このような複雑な形となった。甲皇国入植地ガイシの話である。
 甲家の開放政策によってSHWやアルフヘイムの亜人までもが混在するようになり、毎日のように争い事が起きるようになった。このガイシ東門のそばにおいて、今日もいさかいが繰り返されている。
「また貴様か! ジュリアナ・ワーク!!」
 銀色の髪を振り乱し、甲皇国女性士官服を着た女顔の男が重機に臆することもなく乗り込んできた。髑髏の飾りの下には、大きなふくらみがふたつ、キュロットにもうひとつのふくらみがある。
 再三の勧告にも関わらず、ジュリアナと呼ばれた重機の屋根に立っているSHWの富豪は基礎工事を止めようともしない。
「この土地はミシュガルド鉄道の用地として、正式に買い取りましたのよ。あなたにとやかく言われる筋合いはありませんわ」
「ガイシに近すぎる。工事の音がうるさいと住民から苦情も来ている」
 甲皇国の整備開発局局長であるジュリア・ヴァレフスカは、この名前も職域も似ているジュリアナとことあるごとに対立していた。
「これは異なことをおっしゃいますわね。ガイシに近くなければ駅として要をなしませんわ。せっかくワタクシがガイシと大交易所を結ぶように路線を延伸して差し上げるのに」
「地上げ屋め。そんなこと、誰も頼んでいない」
 ふたりの意見はいつも通り平行線をたどっていたが、予期せぬ事態が工事を止めた。工事を止めた黒い全身タイツの男が、ジュリアナにそっと耳打ちする。
「遺跡を掘り当てちまいました」
 SHWにとって遺跡は観光業の要、ジュリアナは一転して工事を中止する。
 ジュリアにとっては美しい自然もそうだが、遺跡を壊すことにも反対だ。
 永遠に交わることがないと思われたふたりの意見は思わぬ妥協点に着地した。
 その日のうちにエルフの考古学者が呼ばれ、発掘作業が開始されることになる。

       

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