Neetel Inside ニートノベル
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「甲皇国は餓死寸前のキメラです」
「何デヤネン……」
 ロウはトクサの言葉の意味がよくわからなかったため、ボケたのかと思い礼儀としてツッコんだ。
 丙家監視部隊。その名の通り、丙家を監視するために乙家が密かに結成した非合法組織。ロウもトクサも監視部隊の中でも特に重要な任務に就いていた。トクサはさとりあやかしでもある。人の心を読む特性は監視にはうってつけだった。そのため甲皇国を離れることはない。全世界に張り巡らせた監視カメラで、トクサ邸の地下室からモニター写る人間の心を片っ端から読んで情報収集している。
 ロウは影法師のあやかしである。50歳ぐらいでこの部屋の中では一番若い。トクサの護衛と裏切り者の始末が彼の仕事だ。普段はトクサの影に身を潜めているが、こういう話し相手を務めるときなど影から首だけ出している。
 無口なロウでは話が続かない。トクサは給仕しているメイド服の少女に話しかけた。
「ハシタ、あなたは分かりますよね」
 ハシタと呼ばれた少女はぬえあやかしで、見た目に反してロウの2倍以上生きている。おどおどしながらトクサに聞き返した。
「ごめんなさい、私もちょっと。どういう意味ですか?」
「かつて乙家と丙家はまったく別の国の王家でした。それから甲家がダウ大陸を統一するのですが、甲皇国に組み込まれた2家はナンバーツーの座を争うようになります」
「甲乙丙家を3種類の動物の合成されたキメラに例えた感じ?」
「はいはい、ちょっとお待ちを……」
 結論を急ぐハシタを手で制し、トクサは話を続けた。
「それだけではありません。キメラはそれぞれの動物の食性が合わず、何も食べられず最後には餓死すると言われています。同じように乙家と丙家では経済基盤が違いすぎるのです。乙家は南部の農地を基盤にしているので、アルフヘイムと交流して農業技術を上げたい。丙家は北部工業地帯を領有しているので、武器を開発し戦争で消費し続けたい。だから乙家と丙家は争い続けるんですねぃ」

       

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