Neetel Inside ニートノベル
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 ミシュガルドの深い森に上空から小さな影を落とす。赤ら顔に長い鼻、翼を大きく広げて羽ばたいている。鋭い目つきで森の一点を見つめて。常人では見逃してしまうほどのかすかな瘴気を嗅ぎ取って、上空を旋回する。
(大里が活動的になってるね、エンジ)
 エンジと呼ばれたあやかしの頭の中に声が響く。一種のテレパシーだが、エンジが使っているわけではない。魔力を使って任務を補助しているのは地上からあやかしの里を見張っているブロンドのショートカットの少女で、名をハナバという。
「なんでまた、あやかしの里に人が迷い込まないように監視しなきゃなんねーんだよ。里に身寄りのない子供がが飲み込まれたほうがあやかしが増えるってのによ」
 あやかしの里には定住する子里と移動する大里の2種類がある。どちらも里自体があやかしであり、飲み込んだ子供をあやかしにしてしまう。
(素質がある子といっしょに無関係な人間も迷い込むことがあるんだってさ。ビャクグンが言うにはね)
 いつもは甲皇国の乙家のために丙家を監視しているのに、今回はミシュガルドに出現した大里を監視する任務を任された。エンジはあまり乗り気ではない。とはいえこれは任務である。
 瘴気が吐き出されている谷間に向かい急降下。岩肌に触れる寸前ホバリングし、ふわりと舞い降りた。つむじ風が起こり、木の葉が渦を巻く。手に持つ錫杖で地面をつくと、かんが鳴り風が凪ぐ。着地と同時に羽はたたまれ、鼻は縮み、顔の赤みが引いていく。
 一見するととてもあやかしには見えない赤毛の少年の姿となった。

       

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