Neetel Inside ニートノベル
表紙

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 ミシュガルドの遺跡の目の前で、和服の男が途方に暮れている。彼こそはミシュガルドの謎に最も近い男だ。
「お家帰りたい」
 40代後半の気の弱そうな男はその銀白色の頭髪の上に、呪われた証である天冠という黒い三角形を頂いている。
「お家帰りたい」
 行きはよいよい、帰りは怖い。
「お家帰りたい」
 もし帰れたとして、彼を受け入れられる国はあるのだろうか。
「お家帰りたい」
 古今東西、英雄譚で描かれるのは旅の往路の話ばかりである。すべて者にとって秘境はゴールであるが、男にとっては苦難のスタートであった。男の復路の話が描かれる日が来ることを切に願う。

       

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