Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

 科学部部長であるジンタは、座る部員達の前で高らかに宣言した。
「というわけで、今回の科学部の出し物はペットボトルロケットに決定した!」
「出たよ部長の横暴……」
「いくらなんでも文化祭なんて大きなイベントでやらなくてもよくない?」
「そうだよ、私たちにとって唯一に等しい青春イベントを勝手に決められちゃあ……」
「黙らっしゃい!」
 ジンタが怒鳴った。
「いいか諸君。勘違いしないで欲しいが、これは諸君らの為を思っての決定なのだ。いみじくも先ほどナバタメくんが言ったように、文化祭とは我々日陰者にとって高校生活で唯一と言ってもいい青春ポイントを稼げるイベントだ」
「部長、表現が古い」
 マナブからのクレームを無視して部長は話を続ける。
「然らば、我々が出す出し物は最も効率的に青春ポイントが稼げる手段でなくてはならない。そうであろう?」
「そこからペットボトルロケットへの飛躍がまだ説明出来てないんですけど」
 イッヒが眼鏡を押し上げた。違うことをやりたがっているのは明白だ。
「何、簡単なことだ。青春ポイントは概ね4つの要素……友情・冒険・恋愛・性愛の組み合わせによって得られることが先行研究により分かっている。ここまではいいな?」
 明らかによくなかったが、部員たちは黙って聞いている。その方が早く終わるからだろう。
「さて、4要素のうち、友情と冒険、恋愛と性愛は相性がよいが、お互いを同時に満たすのは簡単ではない。しかし! ペットボトルロケットのコンテストであれば4要素を同時に満たすことが出来る! 出来るのだ!」
「はい質問」
 部長が熱く拳を振り上げると同時にナバタメが手を上げた。いつも通り丸椅子の上に正座して、背筋から指の先までをピンと物差しが入ったように伸ばしている。
「ペットボトルロケットと恋愛がどう絡むんですか? 作業の過程で私と貴方がたの間に愛が芽生えるという妄想なら、私はレズビアンなので理論が破綻してますけど」
「もちろん、そうではない」
 部長はイライラしながら言った。
「先月作ったワイヤレス小型カメラがあるだろう。ロケットにあれを載せる。空撮だ。そして隣には女子校……どうだ、分かるだろう?」
 部長は部員たちの顔を見渡しながらいった。
「我々はその日、テロリストにして異邦人となる。文化祭に革命を起こすのだ」

       

表紙
Tweet

Neetsha