Neetel Inside ニートノベル
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 今日は朝から最悪だった。寝坊して遅刻寸前、走れば間に合うと慌てて家を出たら、家の前にあった大きな落とし物を全力で踏んづけてしまった。これがケチのつきはじめだ。
 朝行き損なったお蔭で膀胱が早くも限界を迎えた2限終わり。向かった学校のトイレは大便特有の臭いで充満していた。学校のトイレというのは基本的に臭いものだが、これだけ鮮烈な臭いが漂うのは明らかに現物がある証拠である。しぶしぶ個室を開けて覗いてみれば、案の定大きなものが流されずに残っている。小便する気を失った俺は泣く泣く鼻をつまみながらレバーを踏んだ。
 下校途中に引っ込んだ便意が再発。慌てて飛び込んだ学校近くのコンビニ(帰り道にある数少ないウォシュレット付き便座のあるコンビニである)にあったものは更に大きかった。臭いはさほどではなかったところを見ると出した人は健康体であるらしい。自分のものは自分で始末するという健全な発想も持ち合わせていて欲しかった。辛うじてボタンは押したが、便意も食欲も完全に消失しており、俺は何も買わずにコンビニを出た。
 電車の中でふたたびぶり返した便意をなんとかすべく、意を決して入った駅構内のトイレ(結構汚い)にあったものはもはや原形を留めていなかった。元々出され方が悪かったのかあちこちに飛び散っている上、ドロドロに溶けていて溜まっている水は茶色いゲル状の物質に変貌している。もはや流す気力も失った俺はそのまま退室した。
 こうなったら家まで我慢するしかない。我慢し続けてるうちに大きいものまで催してきている。さっさと帰って綺麗なトイレでするんだ。そう決意して全速力で帰宅した俺を迎えたのは、自宅の前にまだ残っていた大きな落とし物(もう一度踏んだ)、そして自宅のトイレに佇んでいたやっぱり大きな落とし物だった。それは今日出会ったもの全ての特徴を兼ね備えていた。大きく、臭く……いや、克明に描写するのはやめよう。とにかく吐き気を催すほどの邪悪であった。
 ふつふつと怒りが湧き上がってきた。どうして俺がこんな目に合わなくてはならないのか。責任者を出せ……こんなものをひり出しておいて、こんなになるまで放置したアホに正義の鉄槌を食らわせてやるのだ。憤怒の感情を鎮めながら俺はトイレを流し、掃除をして、用を足した。便意が落ちつくと、冷静に物事を思い出せるようになった。
 俺、一人暮らしじゃん。

       

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