Neetel Inside ニートノベル
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 買い物しようとショッピングモールまで車で出掛けたら、対向車線を救急車がサイレンを鳴らして去っていった。消防車が一緒ではなかったから急病人か、或いは事故か。そんなことを考えながら走っていたら、遠ざかっていたサイレンの音がもう一度大きくなった。チラリとバックミラーを見ると、またしても救急車が。今度は後ろの方から渋滞車列を抜こうとやっきになっているようだ。
 なんだ、今日は怪我人が多い日かな、大変ですね、などと他人事丸出しの感想を抱きながらしばらく走る。すぐに抜いていくかと思いきや、渋滞が酷いせいか中々前までやってこない。その割にサイレンの音は中々止まないので、道を迂回したりするつもりはないようだ。この先の渋滞原因である事故の現場まで行きたいのだろう。邪魔してる奴らは道路交通法違反だな。
「じゃあせめて俺は道を空けてあげますか」
 俺は脇道で迂回することにした。別に道路交通法が怖いからではなく、その方がショッピングモールに早く着きそうだから、だけど。幸い脇道は空いていた。これならすぐ着くかな、と思っていたら、後ろからサイレンの音が追いかけてきた。あっちも業を煮やして迂回することにしたようだ。

「まだついてくるの……? そろそろ着かないのかな……」
 しばらく進んだが、サイレンの音は一向に止まない。もう20分ほど走っているはずだが、曲がろうが直進しようが後についてくるのだ。始めは面白がっていたが、まるで追いかけられているようで次第に気味が悪くなってきた。サイレンの音は違えど、緊急車両に追いかけられて気持がいいはずがない。
「いっそ抜かせてやるか」
 そう思い、用事はなかったが道端のコンビニに入る。駐車場で見ていると救急車はそのまま走り去っていった。
「まあ、気のせいだよな。流石に」
 遠ざかるサイレン音に気を取り直して出発しようとすると、なんと再びサイレンの音が大きくなる。そして救急車が駐車場に進入してきた。ビックリして、思わず足に力が入る。しまった、と思った時にはもう遅く、俺の車は凄い勢いでコンビニの正面に突っ込んでいた。
「大丈夫ですか!?」
「くそっ、間に合わなかったか……早く収容を!」
 救急車から降りてきた隊員が口々に叫ぶのを聞きながら俺は思った。大丈夫じゃねーよ。お前らのせいだよ。

       

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