Neetel Inside ニートノベル
表紙

見開き   最大化      

「あー、駄目だ。もう限界!」
 私はペンを投げ捨てた。コーヒーテーブルの上をシャープペンシルが硬質な音を立てながら跳ねて転がっていく。音に気付いた弟が顔を上げた。
「どこ行くの?」
「コ・ン・ビ・ニ! バカのせいで切れたシュークリーム分を補給に行かなくちゃ」
「明日でいいじゃん」
「駄目! 今すぐ必要! 絶対に!」
「あー分かりました分かりました。じゃあついでに僕の分も、なんて」
「あんた自分の立場分かってんの?」
 昼間勝手に私の分を食ったのはこいつなんだが。恨みを込めて肩越しに弟を睨みつけると、弟はちょっとこっちを向いてにやっと笑った。
「いや、立ってる者は姉でも使えって」
「黙れ。氏ね」
私はあらん限りの力でもってドアを閉めた。

 最寄りのコンビニで定番のシュークリームを手に入れた私はほっと一息ついた。ストック用の分は明日行き付けのスーパーで買うだろうからここでは買わない、高いし。
「あとはあいつへの罰ゲームだな」
 私の燃料となっているシュークリームに無断で手を出すばかりか、在庫を切らして放っておくなんて身内とはいえ許しがたい犯行だ。店内を物色すること数分、パーティー用セールの棚にいいものを発見した。
「ロシアンシュークリームか……よし、これに決めた」
 当たらないとつまらないが、少し中身を見て当たりだけ渡せばよかろう。私は二つをカゴに入れてレジに向かった。

「おかえり」
「ただいま。……何あんた」
 帰ってくるなり弟は口を開けてこちらに顔をつきだした状態で固まっている。
「どうせなんか買ってきてくれたんでしょ? ほら」
「どこまでも厚かましい奴だな……お望み通り買ってきてやったよ、プチシューだけど」
「やり。ちょーだい」
「分かった分かった。早く頭外してよこせ」
「ほーい」
 弟は顎の下に手を入れると、捻るようにして頭部を外した。私はそれを受けとると、ロシアンシュークリーム(当たり)の容器の中に弟の頭を突っ込む。
「あまー……うまー……からっ! えっちょっ何これ、出して出して出して! 頭辛、痛い! 何これ何これ! うわー」
 ざまーみろ。絶叫する頭部と悶え苦しむ胴体とを放置して、私は自分の頭部を外し、シュークリーム装置の中に浸した。染み込むシュークリーム分。はぁ〜、至福。

       

表紙
Tweet

Neetsha