Neetel Inside ニートノベル
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苺をひとつまみ。指でヘタをもぎって、そのまま口に放り込む。ここの両親は生クリームと砂糖をかけているけど、私はかけない方が好きだ。苺の香りと甘味は繊細だし、酸味や水気まで含めてそのまま味わうのが趣味に合う。
12月〜1月にかけては、苺の裏の旬になっているようだ。いわゆるハウス苺の出荷時期で、本来はクリスマスケーキ特需に合わせたものなのだろう。それを当てこんで色んなアイスや製菓、ジュース飲料が苺フレーバーの期間限定メニューを出すのが1月〜2月にかけて。1月はまさに裏・いちご月間と言える。
苺フレーバーのアイスや炭酸もいいけれど、やはり生の苺が一番おいしい。苺は元々が高くて贅沢品の部類だけど、ハウスなだけあってやっぱり初夏のものよりずっと高い。
苺をもうひとつまみ。沢山余っているので、気兼ねなく食べていく。買ってから2週間ぐらい経っているので、むしろ早めに食べてしまわないとそろそろ足が早い。
苺は好物だけど、家で一人でぼつぼつ食べるために買ってきたワケじゃない。少しブルーになりながら、冷蔵庫に入れっぱなしのスポンジを思い浮かべる。ここんとこ二人で作って食べるのが習慣づいていたせいで、今年もふらりとつい買ってしまったのだ。お母さんに「私らはこんな甘くて重いもの、もう食べれんよ」と怒られては作るに作れず、なんとなく入れっぱなしになってしまっている。
何か切っ掛けさえあればなあ。なんとなく機会を逸してここまで来てしまったけど、苺はともかく、スポンジケーキを一人でパクつくなんて、流石に悲しすぎる。
そんなことを考えていたら、苺が半分ぐらいになっていた。気がつくとお腹も結構いっぱいで、こりゃ晩御飯食べられないかも、と少し慌てる。ひとまず残りは冷蔵庫へ。食後にお父さんとお母さんが食べるだろう。
おかしいな。死ぬほど食ったはずなのに、あんまり食った感じがない。味わわなかったのか。勿体なさ過ぎる。明日、スーパーで苺が売ってたら買って来よう。そしたらついでに……寄ってみようかな。
まあ、気分で変わるかもしれないけど。

       

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