そんなこんなで放課後屋上に来たのだけれど。。。
「おーい、オマエラその辺にしとけよー」
雨上がりの湿った屋上、オレの体はサッカーボールのように不良共のつま先で蹴り上げられていた。柄の悪い制服を着崩した連中が泥だらけになった制服のオレの姿を見てあざけ笑っている。「やめねーよ」オレの襟首をつかんだヤンキーが頭突きをかまして体勢を崩すと腹に思い切り膝を打ち付けてきた。オレは胃液をぶちまけるとそこへ再び転がされた。
「ごめんなーセックス君ー」
奥に座ったボス的存在の男がオレに声を伸ばす。その声には一切の感情を感じなかった。
「これは東高伝統のアイサツでねー最終的に呼び出されたヤツが俺ら上級生にぼこられるシステムなんだわー」
「こんな脳みそからカウパー出してるよーなの俺らに押し付けるとはよー」
「あのチビ、とんだ悪人だぜ」
「ちっくしょーーよくもダマシタなぁーーー!!!よくもだましてくれたなぁーーーー!!!!しずおかぁぁあああ!!!」
転がりながら声を張ると不良集団がオレを見て笑った。
「汚ったね。ゲロまみれじゃん。これ以上殴れねーよ」
今までオレを殴っていたヤツさえ俺と距離を置いた。
「おい!おまえら!」
事の次第を震えながら見守っていた陰キャ共にオレは声をあげた。
「見てねーで助けろ!それかセンコーか警察か機動隊呼べ!ボンクラども!!」
オレの声を受けてきゃつらはホモのように体を寄せ合って小声で話し始めた。
「だってアイツら、自分の親とか殴るんだぜ。何考えてるかなんて分からんよ」
「そ、そうだぜ」「俺らかんけーし」
「ま、いちおー言っとくけどさ」
リーダー君が彼らを振り返った。
「後でひとりでもチクるヤツいたら、アレ以上痛めつけっから」
それを聞いて凍りつく陰キャ共。
「おい、いい加減にしたらどうだ?」
声を発したのは身長180はある大柄の少年だった。不良たちに尖った視線を向け『ヒーロー見参!』 とばかりに半身でポーズをキメている。
「オレの名は
「あれー、チクるヤツ出ちゃったっかー」「なんだコイツ!」「前の方こいや、コラァ!」
陰キャ共が道を空けると彼は海をまっぷたつにさいて紅海を渡ったっつうモーゼのように彼らの前に姿を現した。切れ長の細い目にかかりそうな前髪が風でたなびいている。
「暴れたりないんだろ?俺が相手してやるよ」
「か、かっけぇ...」思わず言葉が漏れていた。いじめられている同級生を見て喧嘩を止めに入る。そんなの漫画やアニメの話だけだと思ってた。真似したくたって怖くて出来ねーよ。すげーよ、かっけーよ。オレもオマエみてーなオトコになりてー。
「ほら来いよ」
彼は学ランの上を脱ぎ、不良共を手招きした。どうする?と味方に尋ねられたキングがカッと顔をしかめた。
オレは彼の顔を見上げた。見た目も悪くねぇ。オメーはオレの、いやオレ達のヒーローだぜ!オレはヤツらに相当数殴られたんだ!いっちょやっちまってくれ!
「あの、これ以上、殴らないでください。お願いします。。。」
「おい、どうする?」殴っていた奴から尋ねられてキングが額に手を当てて大きくため息をついた。顔を大きく腫らして小声で命乞いをする彼を見て俺らもため息をついた。
彼は内股でファイティングポーズこそとっているが今にもお小水を漏らしそうだった。雨上がりの空のよどみと作者の執筆ペースの遅さで空気に暗雲が垂れ込めてきた。
どうすんのこれ?後半につづく。