1  バカンス | 杏野丞

[作品紹介から]
「令和を目前に迎え、日本を脱出する計画を立てた『私』と真美子は、紆余曲折あってなぜか沖縄へ飛ぶことに。時差もクソもない石垣島の隅っこで、三十路過ぎのふたりは無事、令和の魔の手から逃れられるのか。」

[以下感想]
「令和なんてギリギリまで撒いてやれ⭐︎日本大脱出計画」。それは海外に飛ぶことまでギリギリまで5月1日を回避して悪あがきするものだ。破天荒な友人、真美子の馬鹿な提案は、実際にはちょっとした、馬鹿なノリと勢いで飛び立つGW旅行というものだったのだろう。

 しかし、計画の張本人、真美子が遅刻することで物語は大きく狂っていく。彼女たちは、予定を急遽、国内旅行に変更、そして平成最後の日没さえホテルで寝過ごし、島であっけなく令和を迎えるまでの顛末の話。

 非常に短いページだけれど、どたばたした旅行の様子、またリゾート地での改元景色の情景など、見てきたようなリアリティで伝わってくる作品。何より、昭和に生まれ、未婚のまま令和を迎える「平成ジャンプ」と呼ばれる二人の女性にとって、「平成」がどのような時代であったのか、濃縮された感情を食らわされる。

 人生の計画の何もかもうまくいかない時代でもあり、しかしまた次の改元に一緒に馬鹿をやろう、と笑い合える友達がいた時代。多くの人にとって青春時代のど真ん中であった「平成」は、誰もが多かれ少なかれ、このような錯綜した感情を掘り起こされる、そういった時代だったのではないか。昭和の人間でもあり、平成は非常に中途半端であった私にも、しみじみとそう感じさせる作品だった。

以上です