Neetel Inside ニートノベル
表紙

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 まず連中について詳しく語ろう。連中とはあの三姉妹のことである。
 まずは長女。藤崎凛々香。八歳。年齢的に香澄が一六歳の時に生んだことになる。三姉妹の中では比較的素直なこの少女は非常に好奇心旺盛なところが玉に瑕だ。その好奇心は、この狭い部屋に巧妙に隠された四十二のエロ本を全て見つけ出すほどの探求心を生み出している。しかも無邪気な顔してエロい質問を睦月にするもんだから、真っ赤になった睦月に撲殺されそうになった。もちろん俺が。
 エネルギッシュな凛々香は動き回るのが大好きなようで、毎日のように俺を部屋から引っ張り出して、睦月の家の神社で走り回っている。睦月の親父さんが快く境内で遊ぶことを許してくれたからだ。最初は嫌々だった俺も今では一緒にバトミントンや、バレーボールを買って凛々香たちと遊んでいる。まあ、そのなんだ。たまには外で遊ぶのも悪くない。
 次は次女。藤崎京香。七歳。やたらと大人ぶった生意気なガキだ。素直な姉と違ってひねくれている。そのくせ三姉妹の中で一番の弱虫だ。寝るときに真っ暗が怖いと泣き叫ぶ。
 家はワンルームなので寝るときは同じ部屋だ。三姉妹をベッドで寝かせて俺は床で寝るようにしていたが、寝に入って一五分ほどすると、まず京香がもそもそと布団から這い出し、俺の腹に抱きついてくる。
 その後、凛々香も香恋も前後からやってきてしがみついてくるので、結局ベッドで4人で寝ている。こいつらは何がしたいのかさっぱりわからん。寝苦しいったらありゃしない。しかも京香は夜トイレに行くときにわざわざ俺を起こしてくる。
「別に怖くないもん! だけど一応起きてて!」
 京香はトイレに行っている間に寝てしまうと泣き出す。京香のせいで俺はまともに寝ることさえ許されていない。
 京香に関しては、昼間でもくっつきたがる癖があった。例えば本を読んでいると、腕の中に入り込んで胡坐に座り込んだり、俺が料理していると、腰にしがみついて離れなかったりする。
 あと、睦月とよく謎の言い争いをしている。
「京香ちゃん、あんまり歳の差があるのも良くないのよ?」
「そんなことないと思うわ」
 あとで、睦月から睨まれるのは何でだろう。
 次は三女。藤崎香恋。六歳。いやあ、毎年生んだんだな。香澄は。
 香恋はやたらと……認めたくはないが頭が良い。六歳にして九九が言えるのはどうだろう、と思ったりする。勉強……というか新しい事を知るのが何より楽しいらしく、良く凛々香や京香、さらには睦月から色々教わっていた。
 また変わった嗜好の持ち主で、香恋の中では謎のヒエラルキーが定めれているらしい。ヒエラルキーについて尋ねてみてもむっつりとしてなかなか教えてくれない。一番上はカタツムリであることを凛々香が教えてくれた。ちなみに俺の今のランクは馬の骨だ。
 料理の味にはうるさいようで、外食するといつも文句を垂れている。光栄なことに俺の手料理は気に入ってくれたようで、香恋に加えて他の二人も静かに飯を食べていた。
「――お母さんのご飯の味に似てる」
 香恋がそう呟いたのが印象的だった。確かに俺は香澄から料理を教えてもらっていたから。
 運動はあまり得意でないらしく、いつも公園で遊ぶ時はびりっけつの座を獲得している。もちろんトップはこの俺だ。相手が子供でも容赦なく本気を出すからな。
 負けず嫌いの三姉妹は凛々香と京香が俺にまとわりついている間に香恋に勝たせる作戦でおれをやっつけにくる。おれがまんまと地面に這いつくばっている様子を見て、睦月が大笑いしていた。
 三人ともに言える話だが、俺が買い与えた服は一着ずつだったため、外に遊びに行くとき以外はメイド服を着ていた。もう一着ずつ買ってやりたかったのだが、4人分の食費などのことも考えるとお金に余裕がなかったのだ。家でメイド服を着せていることを睦月が知ったときは本当に殺されるかと思った。
「なんだ桐緒が趣味で着せているわけじゃないんだ」
「違う、違う! だから矢をこっちに向けるのはやめろ! 俺が先端恐怖症だって知ってるだろ!」
「馬鹿ね。知ってるからやってるんじゃない」
「鬼! 鬼畜!」
――あいつの目は笑ってなかった。あいつとの思い出は殺されそうになったことばっかりのような気がする。
 最初煮詰まっていた小説だが、この三姉妹のことをネタに書き進めていくことにした。すると、トントン拍子に話が頭に浮かびあがってきて、キーボードを叩く手が良く進んだ。
 まあ、連中が来て良かったこともあったてことだな。

       

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