Neetel Inside ニートノベル
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ミチとの遭遇
第五章 人生はじめてのモテキ なのに地球がヤバイって?

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第5章 人生はじめてのモテキ  なのに地球がヤバイって?
「せんぱーい! 昨日は急にいなくなっちゃって、どうしたんですか?」
放課後、部室に向かっていると、背後から追いかけてきた広瀬が俺の腕をつかんだ。
「あ、ごめん。どうしたってわけじゃないんだけど……」
急に広瀬は俺からすこし離れて、心配そうな顔になった、
「私、馴れ馴れしくしすぎですか?」
「や、そんな……こと、ないよ。」
俺が、慣れてないだけです。
「ほんとにー?」
「うん……」
「よかったー!」
と、広瀬は嬉しそうに腕を組んできた。
「菜緒ちゃん!」
後ろから、才蔵の半泣きの声がした。振り返ると、才蔵と寛治と祥太郎が唖然とした顔でそこに立っていた。才蔵が俺と広瀬を交互に指さしながら、
「なんだよ、いつのまにぃ?」
と、大袈裟に半泣きの顔をして見せる。
「勇人先輩は、私の初恋の人だって、昨日告白したんです!」

掴みかからんばかりの才蔵と寛治に押し込まれるように、俺達はそのまま部室になだれこんだ。部室には、先日才蔵が設置した佐藤電機店見本品ノート型パソコンが一台置いてある。PCの前にはミチと矢追がいて、パソコンから目を上げた。
「おまえが菜緒ちゃんの初恋の人ってどういうことだってばさ?」
才蔵が俺の胸ぐらを掴んで、問い詰める。
「いや、だから、それは小学校の頃の話だよ」
「小学校の頃の話で、なんで今日は二人して腕なんて組んじゃってんだよ!」
「……」
「広瀬さんはいまでも勇人のことが好きですもんね。勇人も広瀬さんが好きです」
ミチが笑顔で言った。それを見た矢追が、「なんていじらしい……」と、目頭を押さえる。
「先輩っ! ほんとですかぁ?」
広瀬が嬉しそうに飛び跳ねる。
「好きだけどちょっと違うというか、いや違わないか……。いやでも……」
「なにぐだぐだ言ってんだよ……」
寛治が睨む。
「絶望した……!」
才蔵ががっくりとうなだれた。
「先輩、やっぱモテるんですねー」
祥太郎が感心したように呟いた。
ミチが椅子から立ち上がった。
「ぼくは、帰ります」
「なんかあるのか?」
「ちょっと最近忙しく……。暫く部活には顔をだせないかもしれません」
ミチは昨日のギクシャクした感じとは打って変わって、朗らかな雰囲気だ。
「それに最近は活動と言う活動もないですし。ミチがここにいる必要はないですから……。さよなら、勇人と皆」
笑顔でそういうと、部室のドアノブに手を掛けた。
「……さよならって」
ミチは部屋を出て行った。俺は後を追う。

「ミチ! ……おい、待てよ!」
ミチは立ち止まって振り向いた。
「もしかして、もう戻ってこないつもりじゃ……?」
「……ここに長居しすぎたのかも知れません。本来の目的は調査なのに……。それを忘れかけて……勇人たちといるのが楽しかったから……」
「どこかへ行くつもりなのか……?」
「……新しい、調査地点を探すつもりです」
「……なんで、ここにいればいいじゃないか!」
「……調査に必要なのは、冷静な判断です」
「だから?」
「……さよなら、勇人」
そう言うと、ミチは少し微笑んだ。……俺は引き留める言葉を見失った。
と、そのとき、一陣の強風が吹いたかのように目の前の駐輪場の自転車数十台が、一斉に俺を目がけて飛んできた! 正面から凄い勢いで自転車が飛んで来て、俺は瞬間、両腕で防御するような恰好をするのが精いっぱいだった。俺の目の前で自転車がストップモーションがかかったかのように空中に静止して、ガシャーンと大きな音をたてて一斉に落下した。
「止まった……良かった……」
と、ミチがふらついた……。止めたのはミチなのか?
「い、今の何……?」
「わかりません。でも、昨日勇人が言ってた窓が上から落ちてきたのも、偶然じゃない」
「どういうこと?」
「多分、あの野獣と同じ。命を狙われてる。それも今度は、なぜか君が!」
「えっ!」
「ぼくは、君を巻き込んでしまったみたいです……」
と、音を聞きつけて、何人かの生徒が俺達のまわりに集まりはじめた。部室から、寛治や広瀬たちも飛び出してきた。
「どうした!?」
「なに、凄い音したんだけど……!」
カラテ部まで体育館から飛び出してきた。凛や、鬼島さんが
「今の何? 自転車どうしたの?」
と、皆が口々に聞いてきた。
「なんつーの。竜巻って奴じゃないかな……?」
俺は、思わず答えた。
「それで、自転車が飛ばされたのか?」
「……そうみたい」
そう答えた方が無難なような気がした。
「大丈夫ですか先輩!」
と、広瀬が心配そうに聞いた。
「大丈夫……」
「……昨日は窓ガラスで、今日は自転車だなんて」
「……なんの話?」
寛治が広瀬に聞いた。
「おい! おまえら、何事だ!」
部活顧問の番場先生が、苦虫を噛み潰したような顔で現れた。
「あー。よくわかんないんすっけど、自転車が吹っ飛んできて……。あの、竜巻って奴かなって……」
「怪我は?」
「あ、怪我はないです」
と俺は答えたが、ミチは青ざめていた。
「現場にいたのは、佐藤と?」
「星乃です……」
「……ふーん」
番場先生が怪訝な顔をした。
「にゃーん!」
俺達の後ろで、猫の鳴き声がした。変顔の猫だった。そうか、おまえも見ていたのか?
この一件は、番場先生が学校側に報告し、竜巻ということで処理された。


しかし、この一件の為にミチは学校を去ることをやめたようだった。翌日から、変わりなく教室に現れた。ただ、以前より少し避けられてる気がする……。というか、ミチはみんなと、距離をとろうとしているようだった。そして、放課後部室に来ることはなかった。

その日は雨だった。薄暗い天気のせいか、ミチは一層孤独そうに見えた……。放課後一人で教室を出ていくミチを、俺は追いかけた。階段の踊り場で、ミチに追いついた。
「ミチ!」
ミチが振り返り、俺を見上げた。
「なあ、たまには部室に来いよ」
「……」
「それか、なんか美味いものでも食いに行こうぜ!」
「……」
「おーい、どうしたんだよ? 何とか言えよ!」
「勇人、ぼくには関わらない方がいいよ……」
「なに、言ってるんだよ!」
「……」
「おい! ……ミチ!」
ミチはそのまま階段を駆け下りて、行ってしまった。


 その日はずっと雨が降り続けた。みんな部室に集まったけど、ヒーローサイトの更新以外に大してやることもなく、天気のせいか気分もローだった。
「星乃君が部室に来ないんでは、私もここへ来る意味がありませんことよ……」
矢追が部室の窓から、ぼんやり外を眺めながら言う。
「ミッチーの宇宙人モード、俺、結構気に入ってるのになぁ。ミッチーいないと、なんかつまんないな」
「星乃先輩て本当に宇宙人みたいですよね。見た目は中性的なのに、ケンカとかすごく強くて」
祥太郎、おまえは以外と勘がいいな。俺は声に出して言いたかった。
「そう、彼は本物の星の王子様なのよ!」
「矢追!おまえ、な、な、なにを……!」
俺は、焦った!
「わたくし、見ましたのよ。あなたが竜巻って言った、あの信じられない現象」
「なんで……おまえ!」
「わたくしがあんな絶好の機会を見逃すとでも?」
「俺も、実はそうじゃないかって……」
寛治が同意した。
「えっーーー! なんだってぇ? ミッチーが本物の宇宙人ってこと!? まじか?」
才蔵は、信じられないと言う顔をした。
「まさか!」
広瀬は到底信じられないという顔をした。
「わたくしの親戚のおじが変わり者で、UFOとか、宇宙人とか研究していますの」
いや、おじさんも宇宙人並みに生態が謎なおまえに、変わり者呼ばわりはされたくないだろう……。
「おじは隣町に住んでいて、わたくし……先日の件を聞いてみましたの。空中に物を飛ばしたり、それを止めたりする。そんなことは可能なのかと……」
「矢追! まさか星乃のこと!」
「いえ、わたくしは現象について質問しただけですわ」
「で、なんだって?」
「それはテレキネシスという能力だと。念じるだけで物を飛ばしたり、止めたり……」
「あの、その前日も、窓ガラスが三階から落ちてきて……。そして次の日には自転車が、先輩目がけて飛んで来たんですよね。じゃあ、それをやったのは……!」
「確かに自転車は俺目がけて飛んで来た。でもミチはそれを止めたんだ」
「じゃあ、誰が飛ばしたんだ?」
寛治が、眼鏡をかけなおした。
「わからない。ただ二回とも学校内でおきた。もしかしたらそいつは学校内部にいるのかも知れない……」
俺は、薄々思っていたことを口にした……。
「もしかして、この中にいる誰かだったりして――!」
才蔵はふざけた口調で言ったが、みんなシーンとなって、一瞬空気が張りつめた。
「……お、おれは、そっそんなことできません。う、う……」
祥太郎がいきなり半泣きになって、ワナワナとふるえた。
「なんだ祥太郎。トラウマスイッチでも入っちゃったのか? 誰もおまえのことなんて疑ってねーよ」
俺は祥太郎の頭をくしゃくしゃした。世話のかかる奴である……。
「……せんぱ~い!」
祥太郎は俺の腕に抱きついた。
「わ、ばか。鼻水つけるな~」
「ずるいー! 祥太郎君ばっか甘えてー!」
空いてる方の腕を広瀬が掴んだ。
「なんか
、最近おまえばっかもててない……?」
才蔵が恨めしそうに言った。祥太郎は男だつーの!
「なあ、勇人だけは、ミチが宇宙人だって先に知っていたのか?」
寛治が、意味ありげに聞いてくる。
「……まあ、成り行きで。でも、黙ってて欲しいって……」
「ふむ」
寛治は考え込むような顔をした。
「お、おまえまさか、ミチを疑ってるんじゃ……」
「テレキネシスなんて能力持った人間が、この学校に二人もいるだろうか……?」
「何のためにだよ? 意味わかんねーよ」
「だって、おまえだけがミッチーの秘密を知ったわけで……」
才蔵が言った。
「複雑な感情……・が、原因の場合もありますわ。ああ、なんて狂おしい……」
「馬鹿!そんなことあるわけないだろ!」
皆沈黙してしまった。俺は、歯がゆかった。
「ミチがそんな奴だと思うのかよ」
「そうは、思いたくないけど……。でも、どうして二度も先輩が狙われたんですか……?」
広瀬は心配そうに言った。
「俺は、アイツを信じるから……!」
俺はなんだか少し頭に来た。「俺、帰る」と言って、部室を飛び出した。
そして、雨の中、学生鞄を頭にかざして、歩き出した。

       

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