アルミのテーブルを四人で囲む。
 すっかり慣れてしまったが、この顔ぶれで同じ釜の飯を食うことになるとは思わなかった物だ。
 みそかは、相変わらず無邪気に食事を摂る。変わらないというのは良い事だ。だが、いつ何時、組織の構成員としての顔を取り戻すか分からない。そんなリスクがあると桐谷は言っていた。その時は彼女が何とかするとは言っていたが、どうするつもりなのか。
 そんな桐谷は情報の開示や、護衛の姿勢など誠意こそ見せてるが真意がどこにあるのか未だに分からないままだ。華族に普通の人間として生きる道を断たれた挙句、捨てられた報復を狙っているのか。それとも、諸星に救われた恩返しの為か。分からないままである。
 諸星は、今も俺を慕ってついてきている。華族に何らかの危害を加えられたわけでもないのに、自ら危険に身を晒そうとしている。
 そして、諸星だけでない。全国各地から華族に何らかの怨念を抱える人々を集めている。それなのに、俺は肝心な所で他人頼みだ。
 桐谷は一矢報いる可能性があるというが。こんな事で、華族に報復なんてできるのだろうか。この期に及んで弱腰になる。
「みそか、エビ食べる?」
「うん」
 桐谷はエビが苦手なのかスプーンで掬い、みそかの口へ寄せる。
「はい、あーんして」
 みそかは口を開き、エビを招き入れる。
 こうしていれば、何の変哲もない、微笑ましい日常の景色だ。
「桐谷さん。僕にもあーんしてくださいよ」
 諸星が便乗するが、聞き入れられず、願いは宙に浮いたままだった。
「豊、あーんして」
 今度はみそかの番のようだ。
 まるでダーツの矢を握るみたいにスプーンを差し向けてくる。
 傍から見れば奇妙な応酬である。
「みそかは竹ノ内さんに、すっかり懐いているみたいですね」
「そうか?」
「ええ。さっきも竹ノ内さんへの贈り物を探してましたよ。日頃の感謝だそうです」
 感謝される程の事を、俺がしているだろうか。
「みそか、竹ノ内さんへの贈り物、何か見つけたんでしょ?」
 桐谷の言葉で、思い出したのか。みそかは、あ、と口を開き、ごそごそと動き始める。
「綺麗な葉っぱでしょ」
 みそかは、言葉の通り、一枚の葉を翳した。
 淡い緑色で、掌みたいな形をした、一枚の葉だ。ふいにレゲエの神様、ボブマーリーの顔が浮かぶ。
 一言で言えば、それは大麻である。
「それ、どこから見つけてきたんだよ」
 俺は桐谷と諸星の顔を窺う。
 呆然としているのは、皆同じようだった。