Neetel Inside 文芸新都
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No32「侵略王」
破壊された巨大な未来都市。
そこに隣接する荒野にある丘の上には場違いな畳の床があり、この星の主がそこでテレビを眺めていた。

この星の主はその星で生まれ育った者では無い。
たった一人でこの星へ降りたち、破壊と殺戮の限りを尽くし、そして全てを死に絶えさせて、その星の頂点にたったのだ。
この星だけではない。
幾多の文明が、種族が、こいつの為に根絶やしにされてきた。
だが、それは彼にとって単なる過程にすぎない。
彼の目的は惑星の侵略では無い、もっとちっぽけで、もっと邪悪な事だ。

「宇宙道徳を守る強い戦士を殺し、そのパーツを集める事」

それが彼の目的であり、全てだ。
その目的のためだけに、彼は自分の母星を含む、多くの星を滅ぼしてきたのである。

そして彼はまた新たな標的を見つけ、その戦士、カラテレンビクトリーが守る星へと魔の手を伸ばしている。
彼は単体でも圧倒的な力を持っていたが、自らが出向く前に、必ず他の侵略星人達を誘導して、戦士と戦わせていた。

コスモピクシーを筆頭に、ミンサッカ星人も、スコール星人も、ビーヘイト星人も、グライカロッド星人も、ババム星人も、エゼロ星人も、
メルビ星人も、プロメルス星人も、アイワン星人も、溶接マスクに似た透明星人「ビーバベル星人」も、
スドルボ星人も、アイワン星人も、あのバルデリオ星人も、マルデーイル星人も、剣を武器に奇怪な笑いを浮かべて殺戮を繰り返す星人「ハベッツ星人」も、
バチッバ星人も、マジョルラ星人も、パンゲアラ星人も、ゴッポル星人も、フォルソウ星人も、ホルビット星人も…。

皆、彼が地球の存在を教えて、地球へ送ったのだ。

ジャン星人やベベロッタ星人、モルツィロ星人は違う。
恐らく他の侵略星人達が地球へ向かったのを感知して、地球の存在を知ったのだろう。
バクトル星人も違う、侵略経験豊富な彼は自力で地球の存在を見つけ出したのだ。
マルド星人の時は、認知症の星人に適当な事を言って地球へ誘導した。
ジャデッル星人や異次元人、タラミーク星人の時はそれも想定外だったが、自分にとって対して影響があるとは思えず、実際その通りだった。

そして、彼の計算通り、侵略者達は敗れ去っていった。
宇宙道徳を守り、現地の文明と力を合わせて戦う、宇宙の戦士に、自分の文明からはぐれただけの連中が勝てるはずがない。
そう、ただ一人、自分を除いて、の話だが。


「そろそろいいか」

彼の胴体にある顔が、楽しそうにそう言った。

「もうちょっと待ってもいいんじゃないか?」

彼の頭の右側にある顔がそう応える。

「いやいや、もう待てない」

再度、胴体がそう言った。

「君はどう思う?」

右の顔が、頭の左半分……彼の本体に尋ねた。

「……」

だが、本体は応えない。
応える代わりに、マジックハンドのような左手に持ったリモコンを畳の床に置き、ハサミとコルク抜きが合体したような右手で、遠くにいた一つ目の四足歩行の怪物を呼び寄せる。

「ウーン」

小さな男の子のような声を上げて、彼にすり寄る四足の怪物。
その名はニイトキング。
核兵器はおろか、反陽子爆弾の直撃にも耐える、宇宙最強の大怪獣だ。

「「どうする?」」

腹と右の顔が、再度本体に尋ねてくる。
本体は床から立ち上がると、空を仰ぎ、言った。

「行こう」

彼の名は、シャーニイト星人。
大宇宙に名をはせる、最強の侵略星人。
最強の怪獣と、最大の能力と、最悪の心を持った、侵略王である。

       

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