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「そうです。私は独りです。」
kumakatsu666
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=20179

就職活動

 拙著「きっとあなたも独りです。」のパロディとしてアンサータイトル「そうです。私は独りです。」を冠する掌編小説。状態が完結にならず連載とあるので、このまま続けばうれしいです。掌編とあるからにはこれはエッセイではなく小説なのでしょう。小説の世界では断りがない限りフィクションであると捉えるのが一般的です。なのでこの小説もまたフィクションと断じて読み進めていくことにします。
 内容に目を落としますと、就職活動に悩む青年が現状に憤りながらも適者生存あるいは弱肉強食の考え方を通して現状を受け入れていく物語が本筋です。読みやすい文章で織りなされていく疾走感が魅力のひとつだと思います。ただここで一つ重要な点として皆様に訴えかけておきたいのですが、小説というのは表の主題とは別に裏の主題もまた持つものです。本小説における裏の主題とはどのようなものなのでしょうか。
 さて、文章構成と言えば五言絶句の頃より起承転結が王道なわけですが、本小説はですます調により起てられ、口語調に転じて、それを承る形でまたですます調へ回帰した後に結ばれる、いうなれば起転承結の構成になっています。一見、でたらめな文章構成に思えますが、意図的に為されています。ちなみに、英文におけるエッセイの構成としては、イントロダクション、ボディ、コンクルージョンといういわゆる、起、承転、結とでもいうべき三部構成が一般的となされています。kumakatsu666先生の小説もまた承と転をごちゃ混ぜにした三部構成と捉えることもできるのです。
 ここまで読まれた暇な、失礼、賢明な読者の皆様はお気づきかと思いますが、就職活動の現状に小説中の「私」が納得した一方で、kumakatsu666先生は憤りを小説中に隠して表現されているのです。「しかし、しかたがないのであります」とは思っておられないのです。まず、起承転結ではなく、でたらめな起転承結とすることで、古くからの良きものを切り捨てている日本社会をでたらめだと風刺しています。ではなぜ我が国の現状がそうなってしまったのか。答えは文章中にあります。先生が日本の文章構成を壊して仕方なく新たに取り入れた文章構成はどこの国のものなのか。適者生存に勝ち抜いた国はどこなのか。もうお気づきですね。戦争に負け英米の方式を取り入れたことが、でたらめな現状を招いている。その憤りこそがこの物語の裏の主題だったのです。

追伸
名も知らぬ就職中の「私」へ。
私はフィクションの世界が大好きです。
もし私が小説の中の世界へ転生できた暁には、是非お友達になってください。

       

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