Neetel Inside ベータマガジン
表紙

見開き   最大化      

「金色のくびき」
後藤健二
http://neetsha.jp/inside/comic.php?id=19992

第一話(表)

 くびきという耳慣れない言葉がタイトルに含まれています。第一話(表)とありますが、裏もあるのでしょうか。お話の舞台はフォーグル族の領域。フォーグルが永遠を意味する単語であるとふり仮名で分かり、物語の世界観に引き込まれていきます。主人公アモンが得意な狩りをしていると、略奪に長ける兄のチョローが王国から美しい女性を略奪し、鉄のくびきを巻いて連れ帰ってくるところから物語は始まります。
 くびきは頸木、軛。文字通り首にはめる木、転じて首輪全般のことなのでしょう。農業では共軛と呼ばれる複数の家畜を同じ方向に向ける用具にも使われるらしく、キリスト教が従来の厳格な宗教を批判し教徒を増やすために、奴隷のくびきを外せと喧伝したそうです。厳格な教義と自由の丁度良いバランスはいつの時代も難しいのでしょうね。ちなみに、共役な複素数というときの共役は共軛から来ているそうです。
 だいぶ話が逸れましたが、タイトルの金色のくびきは黄金髪の女性がくびきを巻かれているからなのでしょうか。そんなことを考えていると次々に展開していき、最後の一行はとても予想外なことが起こり、どういうこと!? となります。連載物で次を読みたくさせるのは基本だとは思うのですがなかなか実践できず、さらりと実行されているところがうまいなと思います。
 フォーグルが永遠を意味する言葉だと書きましたが、他にも様々なフォーグル語が出てきます。永遠がフォーグルで、天がテングルだったりして、繋がりを想像する楽しみもあります。主要人物の名前も同様なのですが、蛇だとか虫だとかロクでもない意味ばかりです。変な名前を付けて魔除けにする遊牧民的な考え方なのでしょうか。それともフォーグル人にとっては身近な、あるいは尊敬すべきものなのでしょうか。始まったばかりで世界観に馴染むのに必死です。

第一話(裏)
 表はアモン視点だったのですが、裏はその妻ディーナになるようです。おなじ物語を表と裏、アモンとディーナの視点で交互に見ていくようです。こういう小説はどうしても裏がただの答え合わせ的になりがちなので、そのあたりをどう処理していかれるのかこれから期待して見ていきたいですね。
 ディーナが王女様でした、ということよりも、フォーグルの言葉が多少分かることのほうが意外でした。遊牧民に捕まってなお余裕があったのはそれがためなんでしょうか。本人の性格もなかなか豪胆な女性なようです。語り口は知性を感じさせるのですが、その一方で短慮であったり大胆であったりとなかなか掴めない女性ですね。
 第一話の裏ということで、そういうことだったんだあという気持ちになりました。物語としては、表から進まないので、一話の後がこれからどうなるかという楽しみはおあずけのままで気になります。

       

表紙
Tweet

Neetsha