Neetel Inside 文芸新都
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01 まるでダメな子供時代

私の家はよくある中流家庭である。
父母弟と私の4人家族。父は有名な飲食・医療メーカーに勤めている。
子供の頃、父は自動販売機の缶の補充などを行う事があって、
私は父についていって1,2本父に担ぎ上げられて補充をした事を覚えている。
誰も知らない自販機の中は金属仕掛けで、子供ながらに感動し、
他の同年代の友人が知らない自販機の内側を知っていることに優越感を覚えたものだ。
そんな父も、もうすぐ定年退社を迎える。

母も普通の母親だった。
内職をしていたが、途中で働きにでるようになった。
ガスや電気のメーターの検針を行っており、私や弟もついて行った。
一般家庭のメーターではなく、特別な施設のメーターである。
アミューズメントパークや、どこかの会社など。
私が覚えているのは、ウェスタン村と日光江戸村である。
こんな場所でもガスのメーターがあるのかと感心したものだ。
他はよく覚えていないのだが、この2つだけは今でも行った事を覚えている。

別に悪く書くつもりはないのだが、ウェスタン村ではアイスクリームが200円もして、
コンビニで100円で買える物をどうして倍の値段で売っているんだろう?
割に合わない、と子供の頃に思ったせいで、その印象が強いのだ。
そういったアミューズメントパークの中で買う物がその辺のコンビニで買うよりも高い事が
常識であると知ったのは、もう少し大人になってからなので、この点は許してもらいたい。

弟もまぁ普通だ。
普通の高校を出て、普通に大学に行って、観光地にホテルマンとして就職した。
今は彼女ができて2人で同棲しているらしい。
一緒に住んでいた頃は馬が合わず、毎日のように喧嘩していた。
それでも対戦ゲームで遊んだし、2人でいる時間は嫌いではなかった。
無言の空間が居心地の悪くない、数少ない私の大切な存在だ。


そんなどこにでもある普通の家庭に私は生まれ育った。
父も母も私や弟に愛情を注いでいたし、2人が喧嘩しているところは見たことがなかった。
このまま2人で仲良く年を取り、どちらかから先に死に、子供に看取られて……
そんな普通の夫婦で終わるものだと思っていた。


だが現実はそうはならかった。
きっかけは中学3年生の時である。
夕食を家族で食べていたとき、インターフォンが鳴った。
父が出ると、そこには中年のおっさんがいた。
おっさんは父に頭を下げてこう言ったのである。



「あなたの奥さんを愛しています。
 どうか、私と結婚させてください」

       

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