Neetel Inside ニートノベル
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 王は市民の前に立っていた。



 熱狂する群衆は、その帰還を待ち、歓迎した。



 王はそれらに向かって再び語り掛けた。





「私は闇に生きる者達を憎みます。そして、これらを千寿より駆逐する事を誓います。私が光を求めるべく立ち上がったとき、同志は僅かでした。しかし、今日では、百万人の同志が、志を同じくして活動をしています。しかし、重要なことは、運動に参加している同志の数ではなく、同志たちが共有している運動の理念や価値観であります。千寿中の全種類の職業に従事する労働者や、身分を問わず千寿に生きる全ての者が集い、この百万人の強固な共同体は成り立っています。この百万人は、同志と共に団結し苦しみを共にする事だけが、自分たちの明るい未来への唯一の道であり、さもなくば絶望しかないという事を分かっています。この運動に参加している百万人は、他の職業の者と手を取り合い、千寿の市民として、千寿の輝かしい未来の為に活動をしています。この運動に参加している百万人もの市民たちは、闇の者達の誘惑に惑われてはいけません。彼らはこの共同体を破壊し、再び暗黒の時代へ誘おうとしているのです。重要なのは、彼らの甘い言葉に乗らず、階級を問わず手を結び、共に戦う事なのです。千寿市民としてこの運動に参加するのは労働者だけではありません。自分たちが今まで空想に囚われていたことに気付いたブルジョワジーや知識人も、これまでインテリなどと言われて持て囃されていた地位から逃れて、この共同体に参加しています。かつて、闇の者達は市民の命を脅かし、金銭を奪い取り、我々を嘲笑っていました。ですが今、彼らのその笑いは涙に変わっています。この数週間、光の共同体に集う人々の献身的な努力によって、それらを打ち負かしています。共同体に集う献身的な人々が、千寿の存続の為に立ち上がり、戦ってきました。異なる宗教、労働者や公僕、ブルジョワジーや給与所得者として争うのでなく、千寿に住む者として、共に存亡のために手を取り合い、団結したのです! この堅い団結の中で、行動を共にする他の同志への尊敬や労りの念も育まれ、お互いへの理解も深まっていきました。この様に育まれてきた精神により、我々全員が共に前進をしてきました。私は、光を求める人々の願いを実現する事が出来る機関の設立を目指します。私は議会の議席や、高官の職を狙っている訳ではありません。。全ての千寿市民が、同じ目的に向かい、運命を共にできる共同体をもう一度この都市に誕生させる事こそが、私の願いなのです!」





 一言一句、聞き入る様に聞いていた群衆は、一斉に歓声を上げた。



 ある人は涙を流しながら王の名を叫び、ある人は熱狂と歓喜の余りに気を失った。



 千寿に生きる多くの人々が、ワタリ・ゴンゾウという名を、自身の心に刻み込んだ瞬間だった。

       

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