Neetel Inside 文芸新都
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「一応、画像撮りますねー」の声で意識が戻った。
知らない人がそう言いながら顔を覗きこんでいた。
私は、壁際のベンチに座っていた。
知らない景色だったが、内装でここは病院で、服装でこの知らない人は看護師だとすぐ分かった。
「画像」としか言われなかったが、それが脳のことだとすぐに察した。
もう、記憶の欠落が度々起こっていることは確実だった。
この日は特に意識のスキップが激しい。画像撮りますね に「はい」と返事をした直後からもう失っている。
次に気がつくのは仰向けになった私の額に布がかぶさってくる感触、直後また飛んで、別の待合室に座っている。隣に旦那も座っている。(この時初めて旦那の存在に気づく)

同じ日であろう、診察室に呼ばれると、脳の輪切りの連続写真がライトアップされてあった。
 医者:「脳は異常ないね。やっぱり家族の急死によるショックのものだと思いますよ」
診察室へ呼ばれた後からは記憶が継続している。
会計を済ませ、薬を受け取り、旦那の車で帰った。連れてこられた記憶はないが、旦那と帰ったので旦那が連れて来てたんだと思う。
初めて来る病院だったが、診察券か薬の袋でそこは I医療センター という病院だと分かった。
今後、私は2週間おきにここに通院することになった。
 父が亡くなったあの日からは 季節が移り変わろうとしていた。

       

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