Neetel Inside 文芸新都
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朝酒日記
6月

6月は僕にとって特別な月で、空に煌めく月も特別に見える。
ただただ欲しいものと、抜け出ていくものとの間のジレンマ。
16歳の頃に、僕は恋をしていた。それから何も変わってない。
何も成長せずに過ごした、無味無臭な日々に感謝しての乾杯。
川の底はすべて海。流れるまにまに色んなものが流されてく。
記憶だったり、もしかするとどこかになくした情熱だったり。
紫色に反射する水面は何も映さず、ただ不快な色をたたえて。
すべてのもしもが叶うなら、色んなものを消してほしいけど。
ここ最近の心はずっと曇り模様。いっそのこと雨模様なら諦めはつくし、晴れなら足元を気にせず外に出れるのに、という気分。ずっと部屋に篭ってお酒を呑んでで進展はなし。清々しいほどの何もなさ。
特筆することはないけれども、特筆することはないということだけは書いておく。そろそろ外へ出よう。
たった一人の銀河でグロテスクな魚を連れて今日も散歩。すれ違う人はみんな魚介類に見える。それはおそらく僕に精神状態の反映で、僕が魚になっているのかもしれない。
木に生える花が今しか振り撒けない香りを一生懸命にあたりに漂わせている。年に数度しか嗅げないこの香りは僕の心を吹っ飛ばすのに十分な幸せ。甘さの中に懐かしさを内包していて、かつゆっくりと頭を揺らすような柔らかい香り。この匂いのたびに生きているという実感を得る。
優しい香りに包まれ散歩をするとそこは森。木々の中に迷い込むとそこから道ができて、それが僕の歩む道らしい。
この夜は僕の夜だから、瞬間瞬間に責任を持たなければいけない。散歩一つが僕らの存在意義で保証だ。
昨日は朝まで暗がりに浮く海月を見に歩いた。途中、古めかしい通路に座り込んでウイスキーを飲んだりしながら。そしてギターとともに鐘が鳴れば時間は過ぎている。
今日は何に出会うんだろうか。それならば明日は。無限性の中に飛び込んで行こう。
近頃は葉巻が美味しくて人生が充実している。そんなものでいいだろうと折り合いを自分の中でつけていく。
煙と共に歩けば街ゆく人はジロジロと見るから肩身はせまいけど、これが僕のスタイルだから変えられない。それに錬金術師がばらまく変な煙よりはいいはずだ。
昨日は海を見に行った。水晶色に反射する水面は綺麗で、それでも何の感慨も湧かないけれども、綺麗なのは確かで。
足をちゃぷちゃぷとつければしとしとと冷たくて、きときとと歩く気分にさせてくれる。
ここから5000歩も歩けば雲の間際。1000歩歩けば仮の部屋。
通路や壁際や階段を曲がりくねればすぐそこは草原で、森の中で、城郭を上へ上へと歩けば徐に龍が空に舞い上がって鳴き声をあげている。それを魔法使いが変わらずよその街へ追いやっていく。
口から吐き出す煙を見やって僕の存在証明。煙と共にゆらゆら揺れる毎日に体を委ねていけば。
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