Neetel Inside 文芸新都
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うはw急に新しい家族が出来たww
【第】うwwwはwww【5話】

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 そんな、ほのぼのした、つたないけれど家族、を実感していた俺だったが。
 普遍はある日突然終わりを告げ、変わりに現実を突きつけられる。
 なんとなくそんな気はしていた。家族という集合体は、個々人の集合体である。その個人の一つに何かがあれば問題は広がり影響をもたらす。
 影響をもたらすはずだ。


 そうだろ?


【第】うwwwwwはwwwww【5話】


 ここに来て何週かたったころ。


 俺がそれに気付いたのは――疑いを持ったのは一昨日の土曜の夜だった。
 自分が立てた、うはwwスレを覗いた。特に報告する事もなかったが意外に住人がついたらしく落ちることはなかった為、暇なときは覗いて馴れ合いに近いことをしていた。

 その日の会話はこうだった。

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595 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/15(土) 06:47:50.41 ID:Fj8+mlTO
K美ちゃんて部活とかやってないの?オタクなら文芸部とか美術部とか?

596 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/15(土) 06:48:50.51 ID:2dgSaDG0
漫画部があれば入ってそうwww

597 :1:2007/12/15(土) 07:40:50.51 ID:HfhrD3x0
なんか…聞けないふいんきryなんだよね
なんたって無口無表情だ
部活何にもしてないんじゃないかな、まー俺もしてないし
俺が帰ってくると絶対先にいるもん
テストで半ドンで帰ってきたときもいたし
高校でもテスト期間って一緒なのかねーそのときは何とも思わなかったけど

597 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/15(土) 07:42:48.51 ID:ljKua6+0
>>598
まー大体おなじだろうけどさ
ほんとは学校いってなくて登校拒否でヒキだったらワロスwwwwwwww

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 >登校拒否でヒキだったらワロスwwwwwwww


 …なんだと?

 なんてことをいうんだねキミは…。
 俺は憤慨しつつ、しかしまさかと考え始めた。

「え…マジで……?」
 一度そんな事を考え始めたら、止まらなくなった。
 その後のレスも「うはwwありそうwwww」「無気力そうだよなK美wwwwwww」などといったものが次々とつき、俺はますます疑惑を深めた。
 ワロスじゃない。全然ワロスない。

 考えてみると、確かにありえないことはない。

 無気力でだらしないくせに、俺が帰るとかならず既に彼女は例の部屋着に着替えており、全くもってくつろいでいる。殆どの頻度で菓子類を食べた痕跡があり――まるで刑事、小姑のようにチェックしている自分が気持ち悪いが、どんなに俺が早く帰ってもそうなのだ。いや、そんな光景をチェックはしたが、そのときは勿論そんなこと、考えなかった。
 考えなかった――琴美さんが学校へ行っていないなんて。
 なぜなら、…だって、朝食に降りて来た時には、彼女は制服姿だった。そう、可愛らしいK女の赤いチェックのスカート。
 だから当然、彼女は学校へ登校していると思っていた。俺が出たあとに。



 けれど…俺は一度も見ていないのだ。



 俺は不安にかられた。
 同時に、もしそうだとして、俺が介入するべき問題なのか、とふと思った。
 けれど…。
 もう何週間も一緒にいたのに。
 毎日彼女のご飯をつくり、彼女の服を洗い――下着は自分で別で洗えといってるのに何度言っても気にせず洗濯機にぶっこむので俺が結局ブラジャーやら熊がかかれたパンツやらを何も言わず干しているのに。それからそれから――。

 心配して何が悪い?

 俺は椅子から勢いよく立ち上がると、部屋を飛び出して、琴美さんの部屋に向かった。

 トントンとドアを叩くと、彼女が現れた。
 今日も相変わらずヘンな部屋着だったが、もういい加減気にはならない。
 けれど無表情なのも変わらず、あいかわらず俺には彼女が何を考えているのか分からなかった。
「なに」
 素っ気なく彼女はそういう。
 少しその態度に怯むが、毎度の事と思い、俺は彼女を正面から見据えた。
「あの………」
 それだけ言って俺は口をパクパクさせる。
 
 何ていうつもりだ。

 貴方は登校拒否児ですかプギャー、か?
 まさかそんなこともいえまい。
 勢いで来てしまったが、なんと聞くかよく考えてくるべきだった。それこそスレがあるんだから、安価…じゃないにしろ相談すればよかったのに。

「えーと、あの、琴美さんて部活とかやってるんですか?」
 スレ、と考えて出てきたのは住人の質問だった。
「……やってない」
 少し間があったが、琴美さんはそう答えた。
 まあ、そうだろうな。
 俺は頷いて、次に何を聞くか考えた。
 …何も思いつかない。
 なのでつい、思ったこと、というか確信に触れる言葉が口に出た。

「ですよね、…帰宅、はやいですもんね。学校…」
 
 そう言ったときだった。
 彼女の部屋のドアはバタンと閉められ、

「おなか痛いから寝るね」
 とくぐもった声だけが廊下に残された。


 そのときの彼女の顔は無表情だっただろうか。
 一瞬の事だったので分からなかった。

 けれど本当にその時、彼女のドアは閉められてしまった、ということに、後で気付く。
 

       

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