Neetel Inside 文芸新都
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遡る事一週間前。
「実は今日から父さん夏休みなんだ」
それは父さんがいきなり切り出した。母が居ないときにだ。
「ふーん。で?」
今思うと弟は皆嫌いかもしれない。
というか口が悪いのか? 
「でだ、皆で旅行に行こうと思っているんだ。どうだ?」
な、なんと! 父さんまさか母さん抜きでやろうとでも思っているのかい?! 
無謀だよ! いや、被害を受けるのは俺たちかも知れん。
「そうだね兄さんが一緒に行くならいいよ」
「私と一緒に行くのよ!」
「じゃぁわたしも行くー」
皆乗り気(?)だね。まぁおれはどうでも良いけどさ。
というか行かないけどさ。
一回だけ父さんと一緒に遊園地に行った事が在る。
帰った後は地獄でしたね。
父さんが居る間は母さんニコニコしてるんだ。けど父さんが会社に行った途端……ま、まぁいい。
この話題はなしにしよう。
「よし、じゃあ皆で行こう」
「「「おー!」」」
次の日父さんと母さんが消えた。
「てっわけだ」
「はぁ。なんか壮絶ですね」
これだけでそこまで分かるとは流石だね!
「兄さんそれより今日一緒にデートしない?」
「で、デート!? 理さん!?」
「違う。誤解だ。よく考えろ」
聖は深呼吸を何度かした後よろよろと椅子に座った。
深呼吸した意味があんまりなさげだったな。ていうかさっきから弟がまとわりついてうざい。
「やめなさい。はなれなさい。もどりなさい」
「やだよー兄さんと僕は一緒にいたいんだもん」
ときどき考える。これが妹だったらよかったなぁと、ね。
ていうかこのまだと聖に誤解されつづける。
仕方ない。脱出を試みる。
「ああっ!!」
隙を見て弟から離れた後全力で自室へ入る。
素早く鍵を閉め予備の靴を履いてベランダから屋根に移動!
ふはははは。対弟用に用意したこれが役に立ってよかったぜ。
「あばよ! とっつあん」
ドガァァァン!!!!
物凄い音がして振り向くとドアが木っ端微塵になっている!?
ていうかなんか部屋の壁にヒビが入っていて天井からなんかくず的なモノが落ちてるんですけど。
一体何を使った弟よ。ええい化けものめ。
ん? あれはか、隠しカメ……いや。何も見ていないぞ俺は。それより問題は弟だ。
「待って兄さん! 愛の前には如何なるものも邪魔できないんだよ!」
「そんなに一方通行の愛で壊されてたまるか!」
格好よくジャンプ! なんかしません。置いてあるはしごを使い下に降りた後はしごを倒しておく。
「今度こそさよならだ」
「はっ! 甘いよ兄さん。愛のために戦う戦士何だよ僕は。愛の戦士なんだ!」
弟はそう言って屋根からジャンプした。
受身だがなんだか知らんがノーダメージだ。
「ば、化け物め!」
「ちっちっちっ。僕は今愛の戦士ラブアンドラブ!」
んなもん知るか。馬鹿だ。今更だが改めて思い知らされた。あいつは真性の馬鹿だ。それでいて変態だ。
俺は全速力で走る。これでも一応陸上部だったんだ! 過去形だけどな。

       

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