朝になってユウトが目を覚ますと何だか変わった匂いがした。
腕の中が暖かい、ユウトは毛布をめくってその原因を確かめると小さくなった女の子がいた。
「す、スーシィ!?」
確かに昨日は部屋の前で別れたはずだと、ユウトは記憶を思い起こした。
「ん」とスーシィは毛布をユウトからひったくりまた元の様子へと戻る。
「えええ」
ユウトはおぼつかない足取りでベッドから這い出ると深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
「そんなはずは……そういえばアリスはっ――!」
とりあえず扉をあけて部屋の外へと出る。
すると廊下の窓は全て開いており、清々しい朝の匂いが廊下一面に香っていた。
陽の日差しが廊下を心地よい温度にしており、歩くだけで体をぽかぽかとさせてくる。
「朝ってこんなに気持ちのいいもんだったんだな」
思わずそんな台詞がユウトの口から零れた。
光り輝く廊下を少しいくとアリスの部屋が見えた。
ユウトは念のためにノックすると生返事が返ってきた。
「はいっていいわ……」
ノブを捻ると清々しい光りの香りから一転、女の子の匂いがユウトの鼻をついた。
「おはようアリス」
アリスは既に起きていたらしく、ユウトに視線を合わさず喉から返事を返した。
「う~~」
「なんだ、どこか具合でも悪いのか」
「あによ、わたしの何処が健全なのよ!
ご飯も食べ損ねるし、授業はもう始まってるのに誰も来てくれないし……お、おトイレもいけないし」
アリスは布団を叩きながら一節一節語気を弱めて言った。
「ま、まじで?」
どうやらユウトが起きた時間というのはこの学校の生活を著しく無視した酷い寝坊だったらしい。
「今何時だと思ってるの? 十の刻よ。もうあと二刻もしたらお昼よ!」
「ご、ごめん。急いでスーシィも連れてくるからっ」
その後スーシィを起こしに行ったユウトだったが、スーシィは慌てた様子もなく、アリスとスーシィが授業に出られたのは四時限目の実習からだった。