Neetel Inside 文芸新都
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 生徒の誰かが言った。

「また始まったよ。マジョリア先生の演劇癖……」

「嗚呼……! 素晴らしき生徒がこの学舎(まなびや)にやってきて本当に私は嬉しい限りです」

 帽子とステッキを両手に広げ、オレンジ色のウェーブの髪を揺らして舞うマジョリア。

「あの、先生、私はどこに座ればよろしいのでしょうか」

 スーシィが尋ねるとマジョリアは咳払いを一つして帽子を正した。
「あなたは既に優秀な価値観をお持ちです。
 私が指定することなどありません。どうぞ好きなところへお座りなさい」

「ありがとうございます」

 スーシィは浮いた声で答えると、迷うことなくユウトの方へと歩いた。

「スーシィ! こっち空いてるよ!」
「私たちとお話ししましょう!」
「スーシィ、判らないことがあったら俺の席にくるといいよ!」

 てんやわんやの誘いの一切を無視して、スーシィはユウトの隣へ座った。
「ありがとう、みんな。みんなの誘いはとっても嬉しかったわ。
 だから一番みんなの声が平等に聞こえる真ん中にするわ」

 そこでまたクラスのみんなが盛り上がる。

「俺からもありがとうを言うよ! スーシィ!」
「やっぱり道徳心のある子なんだわっ」
「俺、一生スーシィの味方だから!」

 ユウトは生まれてこの方体験したことのないクラスの一丸となった盛り上がりについていけず、不安になった。ところが、隣のアリスは淡々と一人で教科書をめくっていた。

「(馬鹿なんじゃないの、みんなそいつに騙されてるのよ……そいつは私を――)」

 するとユウトの腕に触れるものがあった。それはスーシィの腕である。

「なんだあの使い魔、スーシィに抱擁されたぞ」
「何しやがったんだ!」

 スーシィはユウトの腕に絡みついた状態で教科書を開き始めた。
(何かされてるのは俺なんだけれども)
 
「コホン、それでえは、教科書の4ページから」
 マジョリアは見なかったことにするらしい。ユウトは焦る。

       

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