「ごめんなさいユウト」
スーシィはユウトに平謝りしていた。
「いや、別に怒ってないんだけど……」
「いいえ、これは女の恥よ。そうでしょう? アリス!」
「は? いや、別にそこまではいかないでしょ。それより何なのこの服」
アリスはユウトの背中に乗りながら肩口を摘んだ。
「なんかリースって女の子に頼んだら持ってきてくれたんだ。サイズぴったりだし、借りようと思って」
「リース……?」
アリスの顔がみるみる不満そうなものに変わってゆく。
「? どうかしたのか、アリス」
「あんた、そいつと話したの?」
「いや、話してはいないけど、服は持ってきてくれたし良い子だよ」
「そいつとだけは馴れ合ったらダメよ。それとその服、用が済んだら捨てなさい」
「え? 捨てるって……返すに決まってるだろ」
アリスはそれきり何も言うことはなく、スーシィと三人で歩いた。
「もういいわ、後は……そうね、七の刻になったらまたここへ来て頂戴。それまであんた自由だから」
「え」
アリスが研究室のような部屋へ着くとあっさりとユウトを邪険にした。
図書が積み重なる長テーブルの椅子に腰掛けてアリスは黙々と読書を始める。
「アリス、そんな言い方はないんじゃない。仮にも私が主人ならもっと使い魔は大切にするわ」
スーシィは我慢できなくなったという様子でアリスに言った。
「そ、ごめんなさい。でもここは学園だし、言うだけなら勝手よ。とにかく今は邪魔だから」
関心がないと言った様子でアリスは読み物に耽る。
やれやれと肩をすくめてスーシィはユウトの腕にもたれた。
「あんなの放っておいていきましょう。ユウト」
「あ、アリス」
ユウトは振り返り、重たそうに首を起こすアリスを見た。
「あによ」
「その、晩飯も昼と同じところで食べるのかな」
「そうよ、使い魔のご飯、もといエサはずっとあそこよ」
「……」
再び嫌悪感に襲われたユウトはがっくり項垂れて図書と机が並ぶ部屋を後にする。