Neetel Inside 文芸新都
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 まず、放たれたのは火炎弾だ。
 ボウリング大の大きさのそれは間違うことなくユウトの顔面を目掛けて飛んでくる。

 ユウトはあえて躱さず、持っていた大剣でいなした。

 普通の剣ならば融解してしまうか、上級メイジならそのまま剣も頭も蒸発させてしまう威力なのだが、
 ユウトはその威力がないことを瞬時に判断した。

 無論、剣はわずかな抵抗を見せるだけで軽くその炎をかき消してしまう。
 本気だとしたら随分と可哀想なオークである。

 ユウトは地面を蹴り、一気に脈動する。
 

 青い大剣を担いだユウトは、文字通りの青い線となり一息にその距離を詰めた。
 敵の足元に大剣ごと潜り込み、一気に振り上げる。


 ――しかし、斬ではない。


 これは剣の腹を使った打撃である。
 自身に呪術を掛けた相手には斬撃が必ずしもダメージになるとは限らない。

 斬られて死ぬようならば剣の間合いには入らず、
 もし斬られるようなことがあれば必死で躱そうとするからだ。


 だが、このオークは躱すどころか愚直に攻撃を受け宙に浮く――。

 ユウトはこの瞬間、『相手の特性』『思考性』『奥の手』の有無などを瞬時に判断し、戦闘方針を変える。


 また、道連れ目的で呪術を施しているものも中にはいるので注意がいるのだ。
 だが、このオークは空中に放り出されたことに至ってもアイスボルトの一つ程度しか撃ってこない。

 ユウトはその哀れな足掻きを首をわずかにずらすことで躱し、
「はッ――」
 息をはき出すと同時に剣先を十字に斬り出す。


 大剣を担ぎ倒すように二撃を放つと敵はいとも簡単に事切れた。

 オークはまさかその大剣が目にも追えぬ速さで来るとは思わなかったのか、
 驚いたような面持ちも声を上げる暇もなく果てた――。

       

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