Neetel Inside 文芸新都
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 アリスは勝手に使い魔が部屋に入るのは仕方がないことだとしてもリースまでいるのはどこか不服だった。
「あ、ごめん、今やってるんだけどさ」
 リースも頭に三角頭巾を被ってぞうきんを握っていた。
「せめて、着替えを持って外へ出るべきだったよ」
「そう思ってるなら出来るでしょう? 何度目だと思っているわけ?」
「ごめん――」
 こんなことが言いたいわけじゃないのに……。アリスはますます自分が嫌になってきた。
 ユウトが頭を垂れて床ふきへ戻った時、とんとんっとアリスの部屋の扉がなった。

「どちら?」
 アリスが扉を開けた先には碧髪のシーナの姿があった。
 ミントの両眼を優しく細めて彼女は頭を下げた。
 アリスは何故だか自分でもわからないまま、ユウトを見せるわけにはいかないと部屋の外へ出た。

「この学園には放課後に研究という名目の自主勉強があると聞いたのですが、
 よろしければミス・アリスの研究を見てみたいの」
「……誰に聞いたの」
 また冷やかしだと思った、それもこんな時に。
 アリスは自分の研究がいかに他の生徒たちから奇異の眼差しで見られているかは重々理解している。

「皆さん放課後の自主研究についてはそれは熱心に語られました。
 しかし、ミス・アリスの研究を尋ねると不思議なことに誰もが口を閉ざしたのです」
「それで、見てみようって?」
「失礼かとは思いますが、皆さんが口を閉ざす理由が私には判りかねます。
 志を同じくするフラメィンの気高いメイジ――」
「はいはい、もういいわ」

 要するにみんなの言うことが信じられないからここに来た。
 そういうことなのだとアリスはそう結論付けて早々追い返すことにした。

「悪いけど、見せてあげることは出来ないわ。
 興味本位とかで見られるのはすごくイヤなの。
 だから帰ってくれないかしら」

「ごめんなさい、心ない考えでした。お許し下さい」
 失礼します。そう告げてシーナはアリスの元から立ち退いた。
 入れ替わりでスーシィが来る。

「――今のシーナじゃなかったの?」
 スーシィの手には見たこともない古ぼけた本が抱えられていた。

       

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