Neetel Inside 文芸新都
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「なっ――」
 アリスの両目はユウトだけに見えた。
 そこには睨みつける目も涙を溜める目もなかった。
「…………わかりました、行きます」
「シーナ……」
 ユウトにはシーナの決断が正しいとは思えない。
 シーナが行かないと言えば、ユウトはここに残るつもりでいた。

 それじゃ、行きましょうとスバルを促すアリス。
 その淡い桃色の瞳からは何も読み取れなかった。

「話しはまとまったんだね。ところで、その男の子はどっちの使い魔なんだい?」
「私のよ」
 アリスは臆面もなく答えた。
「なるほどね」

 スバルは何を納得したのか、歩き出す。
 歩いている途中でスバルはアリスに言う。
「次の部屋ではまた明かりを頼めるかな。
 部屋全体を明るくするには君の魔法が必要だ」

「わかったわ」
 スバル、アリス、ユウトと続いて、その後ろを重い足取りでついてくるシーナ。
 ユウトはシーナに小声で言った。
「(大丈夫か? 俺もここから先が安全だとは思えないけど、残るつもりなら俺も残るぞ)」
 シーナは微笑んで首を横に振る。
「(いいんです、それではただのわがままですから)」
 そうでしょう? とシーナは目を細ませる。

 恐らくアリスはユウトを残して行きはしない。
 そして、使い魔のいないシーナにとって、ここでの単独戦闘は死を意味するだろう。
 震える手を見てシーナがどれだけ暗闇が苦手かを再認識した。
「(ごめんな)」
 シーナはまた首を振ると、それきり一言も喋らなかった。

「hyeli isscula!」
 アリスが火花を散らした魔法を唱える。
 マナを放出し続けることで、杖の先端が明るく光る魔法だ。
「さ、使い魔の君。今更だけど言葉はわかるんだね?
 敵がいるかも知れないからアリスと前に出てくれ」

 ユウトは細身のツェレサーベルをするりと引き抜いた。
「行くわよ」

       

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