Neetel Inside 文芸新都
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 気がつけば空もうっすらと陽が差し、成功を終えた直後、
眠るようにして倒れたシーナだったが、驚くことに朝にはいつも通り元気だった。

「大丈夫?」
 ベッドから半身を起こすシーナにスーシィが言った。
「はい」
 アリスはユウトの横で複雑な顔をしていた。
 時折そのクリーム色の髪を指で持て遊びながら暇を持て余している。

「それにしても、ずっとそんなことをしていたなんて呆れるわ」
 スーシィはシーナの額に手をやったりしながら、調子を見て言った。

「そうよ、あの時スーシィに頼めばもっと簡単に教えてくれたんじゃない」
「まぁ、確かに私ならダブルワンドくらい出来るけど、
 そんなものをおいそれとやってしまって目立つわけにはいかないわ」

 スーシィが大人のメイジだということは三人の秘密だ。
 シーナにはこの事実を隠すようにアリスたちは適当に話題を逸らす。
「さ、支度をして行きましょ。セイラに目に物見せてやらないとっ」

 ユウトはシーナがベッドから降りると、早々に部屋から追い出された。
 廊下に出ると、二つの影が部屋の前を通り過ぎていくところだった。

「リース……」
 その背中に呟いた。
 リースはカインの元へ戻ったと聞いた。
 少し寂しい気持ちはあったものの、うまくやっているのだろうかとユウトは思う。

 カインの背中を歩きながら、リースはゆっくりと横顔をユウトへ向けた。
 その顔は最初に見た時よりも、しっかりと芯のあるものとなっている。
「……」
「――元気でな」
 廊下の角に消える二人の影――。リースは小さく微笑んでいった。

 数十分してから支度の終わったシーナが出てくる。
「ユウト、あの剣なんですが……」
「ああ、ずっと気になってたよ。ありがとう」
 部屋の隅にあったユウトの大剣。
 何やら赤い布でぐるぐる巻きにされていたが、
 シーナが持っているのなら問題はないと安心する。

 ユウトは今のところその大剣を特に必要と感じていない。
 それにこの学園では使い魔の武器にストックが許されていなかった。
 ユウトにはまだツェレサーベルの剣がある。
「そうですか、では置いておきますね」
「二人だけの秘密だぞ」

       

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