Neetel Inside 文芸新都
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 ハルバトの全身からマナの熱気が溢れ、シーナは身が竦んだ。
 刹那、龍の口からどっと吹き出したのはまさに灼熱の業火。

 何が起こったのか? ユウトたちの反対方向の半分が一瞬にして苛烈な炎の海に包まれる。
『骨と化すが良い!』
 シーナの実力ならば、少しは耐えられるだろうとユウトは頭の隅でどこか安堵していた。
 だがこれは助けに行かなければと思う。
 しかし、体が動かない。アリスのきつい抱擁がそれを許していなかった。
 そして猛威はさらに勢いを増して頂きの一部を文字通り消し去るほど長く続いた。
「ま、まて……」

 うっすらと汗が滲んでくる。
 ユウトは意識こそ保っているものの、これだけ打撃を受けた後ではアリスさえ退けられない。
 光りが熱によって屈折し、見るもの全てに歪みを与える。
 数百メイルは通り越した、炎の柱という名の爆風が突き抜けていく。
『フハハハ、これでは骨も残らんな』
「――――っ」

 その間アリスはユウトにしがみつき、必死に耐えていた。
 嗚咽も懺悔もない、ただ仲間の死と己の死を思い震えているのだ。
 ハルバトが攻撃を中断する。
 そこには岩が融解し、黒ずんだ地表が紅色をまぶし、煤煙(すすげむり)と共にあった。
 そしてそこにシーナの姿はない。

「そ、んな……」
『小娘、素晴らしいマナだったぞ。
 たった一部を理解し吸収しただけで、この力……エレメンタルよりも格段に良い。
 そうだ、そこの男だけを殺し、お前は取り込んでやろう』
 今度こそ終わりだとハルバトは尾を振り上げる。
 ユウトは何とかアリスだけでも逃がそうと構えた。


「Tella Winc!(障壁)」
 尾は再びはじき返される。
 ハルバトは予測しなかった防壁にうねりながら横たわった。
 それと同時にユウトたちは風に包まれ、声の主の方へ引き寄せられた。
「なんとか、間に合ったみたいだね」
 現れたのはランスだ。その肩にはアリスの預かっていた小動物のような使い魔も乗っている。

「悪い、助かった」
「礼ならユレンに言うんだな。こいつがみんなの危機を知らせたんだ」
 そう言ってランスはユウトに目配せするが、その顔は何故か朱に染まった。
 ユウトはぼろぼろ、アリスはユウトにしがみついたまま気を失っている。

       

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