Neetel Inside 文芸新都
表紙

見開き   最大化      


 一夜が明ける。
 ユウトは陽の光りが出て生徒たちが顔を洗いに部屋を出る頃、シーナの部屋を訪れていた。
「はい、どうぞ」
 明瞭とした声。シーナはユウトの姿を見ると、朝の挨拶をした後に嬉しそうな顔をして机の椅子を用意した。
 他の生徒たちよりずっと早くに起きているのか、シーナの身支度は全て終わっていた。
「いや、今日はその、剣を貰おうと思って」
「預かっていた大剣のことですね」
 ユウトの実力は蒼剣(せいけん)があって何倍もの強さとなる。
 しかし、それは力に頼っているようでユウトは嫌いであった。
「ごめん、いつまでも預かってもらっていて」

「いいえ、いいんです。それより私の方こそ、
 その、剣の魔力を封じ込めるために、ジャポルで少し手を加えてしまいました」
 シーナは頭を下げる。
 ユウトはそのことより、シーナの身を心配した。

「え、ええ……問題ありません。気づいたのは本当に幸運でした……」
 それを聞いてほっとするユウト。ただならぬ剣だとは思っていたものの、自分以外の人間が触れたことは無かった。

 シーナの話しによると、剣を不注意に触ったものは剣の力に支配されるという。
 それはつまり、剣の魔力に意志があるということを意味していた。
「本当に何ともなかったのか?」
「は、はい」
 どうして早く言わなかったんだとシーナの肩を掴んで瞳を見つめた。
 じっと見つめるユウトに頬を染める。

「良かった、大丈夫そうだ」
「はい……」
「でも、やっぱりこの剣は謎だらけなんだな……」
 四年前に手に入れた大剣――青く光る刀身から蒼剣セイラムと呼ばれている。
 数々の犠牲と奇蹟に近い運がもたらした偶然から手に入れた産物。
 空のように透き通り、海の如く青い刀身は一振りでどんな力もねじ伏せる。
 それが今、手元にある。
 シーナによって赤い布で封印されてはいるものの、
 はっきりとその鼓動のようなものがユウトには伝わってきた。

「赤い布は外しますね」
 杖を取り出して解除魔法を放とうとするシーナ。しかし、ユウトはそれを制した。
「もう少し、待ってくれないか」
「え?」
 せっかくの機会だ。ユウトはこの剣の魔力の正体が何なのか知りたいと思った。

「……わかりました」
 シーナは布の解除をいつでも出来る状態にしてくれたが、ユウトはずっとこのままでもいいと思う。
「封印を破りたい時は布を取り払ってください」
「わかった」

 シーナに厚くお礼を言って、ユウトは部屋を後にした。
 封印された状態でもユウトは剣を握っている間に体が軽くなってくるのを感じていた。

「これじゃ、どっちの力で勝ったんだかわからない……」
 イスムナで生き残れたのは偏にこの剣のおかげによるところが大きいのかもしれない。
 自分の実力であるところも確かにあっただろう。
 だが、ユウトにとってそれは自分の求めている力とは少し違った。

       

表紙
Tweet

Neetsha