「――あの、お言葉ですが大先生」
「なにかね」
アリスはてっきり四本足の獣(モンスター)の類、または使い魔を使うか、
最近になって開発された魔法乗用機を使うと思っていた。
「ホーディッシュやレオフォリオは…………」
「徒歩は厭うかね」
「い、いえ……」
どうやら目の前の老人が徒歩で行くと分かった今、
余計なものを詰め込んだ手提げ袋などが邪魔で仕方がない。
こんな状態で長く歩けるものではないとアリスは立ち止まった。
――すると大先生(学園長)も立ち止まる。
それもそのはずだ、使い魔は召還した本人にしかわからない。
いくら目の前の老人が生粋のメイジとはいえ、召還した本人しか知り得ない使い魔を特定することは無理なのだ。
アリスは少し、自分のペースにしようと考えた。
「主は――、何か勘違いをしておる」
長旅には不釣り合いなほど大きな手提げ袋。
どのような旅をしようとしているのか、
そのおおよそは老人の彼が諾するところではない。
「主の使い魔は既に主のものにあらず、
その贖罪をただの旅歩きと考えておるのなら即刻メイジを辞めよ」