Neetel Inside 文芸新都
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 闇に滞る獣か虫の鳴き声が彼らの話をしばしの間紡いだ。

「何にせよ。納得致しました。
 あの四大魔術師の一人がこうして自らご足労なさるのも頷けます」

 これを、と差し出した一枚の紙切れ。
 今度はフリーパスではなかった。

「期限付きですが、ジャポルまでならこれで問題なく検問をくぐれます。
 あなたの使い魔に傷を負わせてしまったお詫びとしてどうか受け取ってください」

「あれは使い魔ではないぞ」
「左様でしたか、伝説では魔物を契約なしに使役できるメイジは
 絶大なマナを秘めていると言いますが、
 まさかこの目で見ることができるとは思いませんでした」

 男は巨大な体躯をしたタイガーに跨り、

「この先数千メイル先にジャポルへ直行できる街があります。
 先ほど渡した手形を見せれば問題ないはずです」

 さあ、乗ってくださいとタイガーの背中を向ける男。

「いくら大老師とはいえ、森で寝ていては襲われてしまいますからね」
「その時は森を焼失させて良いかの」
「そのときはいくら大老師といえど、国があなたを捕らえます」
「冗談は通じんのか……」
「……」

 星空が輝く月夜に勇ましく駆ける使い魔。
 メイジは見かけによらないと男は考えていた。

       

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