アリスは応えない。
そのシェルピンクの瞳が黙って女を向いている。
女も負けじとフードの中から睨め付ける。
しかし、アリスが怯んだり戯けたり、怖じ気立つことは一切なかった。
「――わかったわ……、
そういうことなら代わりの使い魔を用意しましょう。
もちろん、強くて役に立つ使い魔よ」
女はアリスの瞳が一瞬その色を変えたことを見逃さなかった。
そこで女は両手を広げて一押しする。
「どうかしら、お望みとあらば、『ドラゴン』の一体でも用意するけれど」
メイジにとって、いや人々にとってドラゴンは憧れの象徴だ。
今でこそ、そのドラゴンを使い魔にするものは数を見なくなったが、
昔はドラゴンと人は好ましい関係にあったという。
だが、それでもアリスは首を縦に振ろうとはしなかった。
「そんなに良い使い魔なら自分で使役すればいいわ」
アリスは一蹴し、
女はアリスのその一言に撃鉄を落とした。
「……そうやって粋がるのも今のうちね……。
いいわ、それならデッドサモン(強制召還)させるまでよ!」
「――! あなた、メイジの誇りってものがないの?!」