アリスは回復の為にもう一眠りしたいと言って布団へ潜ったので、
ユウトは街へ出ることを告げると外へと駆けだした。
雑踏をかき分け屋台やら見せ物の間をくぐり、小さな子供を躱して古ぼけた石畳を踏み越えて行く。
「――大丈夫なんだろうな……シーナ」
ユウトが気に掛けていたもの、それは置き忘れた剣だ。
シーナがあれを持っていけるとは考えづらい。
「ここだ」
アクアアートが背後を通り過ぎて涼しい風になったのをきっかけに、
ユウトは意を決して煉瓦造りの門をくぐり、その広場へ踏み込んだ。
「間違いない……はずなんだけど」
――ない。剣がなくなっている。
シーナが持って行かなくても他の誰かが持って行く可能性は充分にありえる。
「あんな剣……どうやって」
蒼い刀身の剣など珍しがって買い取る店があるかもしれない。
しかしユウトの持つ大剣は特殊な能力のため、常人には持ち上げることすらできない。
なぜ忘れてしまったのかといえばそれまでだが、
あの時はベンチの横に掛けた剣をすっかり失念してしまっていたのだ。
「はあ――」
しかし、こうなってはもはや取り付く島もない。
シーナが持っていてくれるのを信じたかったユウトだが、
あれは魔剣の類なので主以外の者が持つとどんな災厄がもたらされるかわからない。
「はやく見つけないと……」
もしかしたらシーナが気を利かせて銀行に預けているかもしれないと思うことにして、
シーナと寄った銀行に足を運んだ。
…………………。
………………………。
…………………………………。