なんとか切りだそうとするユウトだったが、清々しいアリスの顔を見ると言い淀んだ。
「こんにちはあ」
「?」
ユウトの脇からのぞき出た少女にアリスは度肝を抜かれたようだった。
「ちょっと、まさかあんた……」
同じ黒髪、並んで見ると見えなくもない。
「こ、ここ、子供……!」
「ち、違う! この子はなんか、アリスを知っているみたいなんだ」
「はあ、なんだそうなの――って! 私、こんな奴知らないわよ」
おあいにく様とアリスは手を翻す。
「そんなはずないわ、ア・リ・ス」
「――っ」
突如その小さな体躯からは想像もできないような妖艶な声を発すると、
少女はにこりと笑って部屋へ入った。
アリスは驚愕の形相で少女を見つめる。
「あの時の――? でも……」
アリスが会ったあの女はもっと背が高かった。しかし、今目の前にいる少女はベッドに座るアリスと同じくらいしかない。
「気がついた? 私はあの時の。この姿は、わけあって戻れなくなってしまったの」
少女は部屋の真ん中にあるテーブルの椅子を勝手に壁際に持ち運び座る。
「どういうこと? 何しにきたのよ!」
アリスは敵意を淀ませることなく少女へと向ける。
「ごめんなさい、虫が良いのは判ってるつもり。
でも今は他に手段がなくて、お願い……助けてほしいの」
アリスは咄嗟に杖を出そうとするが、それは懐にはなかった。
「私は……魔法を失敗してこの姿になったのよ」
それが意味すること、それはつまり変化の大魔法を失敗したということだ。
それで、と少女は言葉を紡いだ。
「ちょっと待ちなさい。あんたね……私にあんなことをしておいて、今度は助けてほしいですって?
虫が良いにもほどが――」
「助けてあげようよ」
ユウトが言った。